complete #19 

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 縺れるように転がり込んだ玄関。
 後ろ手に鍵を閉める音と共に、涼一の唇が聡の項に落ちた。
「……んっ」
 肩を竦め、ビクリと身を逸らしながら甘い声がふたりを煽る。
「聡……声、色っぽい」
「なっ」
 そのまま這うように項を辿り、襟足から耳の裏を舐め上げる。ビクビクと身動ぐのを後ろから羽交い締めにすると、ちゅ、と音を立てて耳朶を吸った。
「……んんっ」
 思わずギュッと目を閉じた刹那、洩れる声に聡自身身を捩る。恥じ入る姿がこれ以上なく挑発的だということに気付いていないのか、赤らめた頬を隠すように俯いてしまった。
「もう……どこまで俺を煽るんだよ」
「りょ、いち……?」
「可愛いな。目が潤んでる」
「……バ、バカ」
 すい、と目尻を撫で上げると怒ったように睨むのだけれど、それとて桃色に染まった目元では恐くもない。逆に加虐心と庇護欲を同時に煽られ、涼一はクラクラと眩暈すら感じた。
「愛してるよ、聡……」
「……ぁ、っ」
 後ろから抱き込むように無理矢理に唇を重ねる。
 しっとり合わさった唇を二度、三度、擦るようにして刺激を与えれば、たちどころに聡の足が震え出す。肩をズラしてこちらを向かせ、そのまま深く貪ると、強く吸い上げた瞬間カクンと膝が抜けた。
「わ、……っ」
「キス、気持ち良かった?」
「……言わせ…る、なよ……」
 呼吸すら整える余裕もなく、ただ必死に腕にしがみつく彼が、開発の場では押しも押されぬリーダー格だと誰が想像するだろう。頬を染め、目を潤ませ、羞恥心に打ち震えながら、それでも求める気持ちを抑えられぬ様は、涼一の自制心など簡単に打ち壊してしまう威力を持っていた。
「聡。靴、脱げる?」
「ん……」
 腰を支えたまま促し、長い廊下をエスコートする。
 玄関を入って右手がキッチン、左手がバスルームという典型的なワンルーム。12畳の広さを持つリビングは普段なら広過ぎるほどなのに、聡を伴って入った途端空気の密度に窒息しそうだと思えた。
 僅かな緊張すら期待と興奮に塗り込められてゆく。
 ゴクリ、喉が鳴ったのはどちらだったか。
「あ、」
 携えた鞄を奪い、コートと一緒にジャケットを剥ぎ取る。強引に唇を塞ぎ、何かを考えるより先に薄いシャツ越しにその背中に腕を回した。
「……涼一っ」
 切羽詰まった聡の声が涼一の理性を砕いてゆく。器用に相手のネクタイを外し、シュルリと音を立てて床に落とした。
「……ヤバイな。我慢出来そうにない」
 露わになった喉仏に食らい付くように顔を寄せれば、聡は頭を抱きながら溜息を零す。
「そんなの、しなくていい……」
「いいのか」
「だって……涼一が我慢してたら2度もフライングでキスしない」
 至近距離、悪戯そうな瞳で。
「……言えてるな」
 クスクス笑って目を閉じて、どちらからともなくキスを交わす。
 ふわりと柔く、ゾクリとキツく。舌を絡め、唾液を混ぜて、身も心も甘くとろかしてゆく。縺れるようにベッドに倒れ込んだふたりは互いに手を伸ばし、繰り返し痺れるようなくちづけに酔った。
「嘘、みたい……涼一が、俺のこと……」
 好きだなんて、と譫言のように呟く言葉を敢えて塞ぎ、息継ぎの合間に耳元で告げる。
「初恋が実らないっていうの、アレ、嘘だな」
 そう言ってにっこり笑うと、恥ずかしさを通り越して呆れたのか、聡の眉が盛大に下がった。だが、それとて彼なりの照れ隠しなのだと今なら分かる。
「結ばれよう? 身も、心も……」
 掌を胸元に滑らせ、跳ね上がった腰を抱き締め。
「りょ、ぉ……いちっ」
「大事に抱く。……俺に、おまえをちょうだい───」

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昨日は更新出来なくてすみませんでした。研修大詰めでいろいろ大変なことに
(主に終了後の打ち上げが/笑)というわけで、明日は唐突にR指定です(笑)

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complete #18 

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 出荷ギリギリの偉業を成し遂げたふたりは、結局のところ丸一日の労働を埋め合わせるため、揃って強制有休取得となった。
 お上からテコ入れがあったら俺の首が飛ぶだろうがと文句を言いながらも、ピンチを救ってくれた部下へ感謝の言葉は忘れない。何かあった時のために常に連絡だけは取れるようにしてくように、とのお達しを胸に涼一は会社を後にした。
 足取りが軽いのはきっと気のせいではない。
 日が昇り始めたこんな早い時間に帰れることも嬉しかったし、自分の成果を評価されたことも満足だった。
 けれど、一番は───。
「お疲れ」
 ビルの入り口、控えめに待っていてくれた聡と共に乗り越えられたことだからこそ。
「そっちどうだった?」
「おまえんトコと同じ。とにかく今日は休めって」
 決定を伝えると、聡は「そっか」と言って苦笑した。
 今から遡ること2時間前。
 ふたりが現場を片付けている最中、早々に出勤してきた聡の上司に事の顛末を説明すると、派手に笑い飛ばされた後で聡の有給が決定した。
「話の分かる上司で良かった……」
「確かにな」
 労働基準法などまるで無視の見切り発車だったのだ。普段は頭の固い涼一の課長も、第一報の報告には眉を顰めたものの、事の重要性を加味し溜息ひとつで済ませてくれた。
 春先の少し湿った空気がふたりの頬を撫で上げてゆく。
 普段はオフィスの一角に缶詰になって朝から晩までパソコンと睨めっこしている生活のせいか、朝10時半に外を歩いているだけで変な気分だった。
「なんかサボってるみたいだよね」
「あ、それ俺も思った。普段は日の光も当たらないモヤシっ子生活だからなぁ」
「なにそれ」
 顔を見合わせクスリと笑って。
 昨日までにはない、互いの間に流れる柔らかな空気に気恥ずかしさも感じながら、ふたりはゆっくりと駅へと足を向けた。
「涼一、今日はどうするの? 帰って爆睡?」
「あー……今ベッド入ったら3秒で寝そうだな。寄る年波には勝てないっつーか」
「なにジジくさいこと言ってんの……」
 苦笑するのを見下ろす、そんなことですら今は嬉しい。眉を寄せるほど持ち上がる口角がこんなにも色っぽかっただろうかと、間近で見ながらそっと咽喉を下げた。
「……なぁ、聡。家来いよ」
「え?」
 口にした途端、想いの強さが一段と上がる。
 言葉にした途端、それはハッキリとした輪郭を持ち始めた。
「やり直そうぜ、あの日から」
 腕時計の文字盤、刻まれた日付は14日。
 それは奇しくも卒業式と同じ日を指していて、「ちょうど今ぐらいの時間が式だったよな」という言葉が追い打ちを掛けた。
「うわ……出来過ぎじゃない?」
「12年も空回ったんだぞ。それくらいでいいんだよ」
「もー、どういう理屈?」
 くすくす上目遣いに笑いながらも、聡はそっと距離を縮める。
「異論ないだろ?」
「ハイハイ。そういう強引なところも変わらないよね」
 目を細めて許す仕草にドキリと胸を高鳴らせる。
 聡をさり気なくエスコートしながら、涼一は湧き上がる愛しさを抑え切れずにいた。

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今日から研修出張で奈良にいます。宿泊施設では、超真面目な顔して
ノートで更新書いているわけです。顔がニヤニヤするのが玉に瑕(^-^;)

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complete #17 

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 腕の中、掻き抱いた髪を丁寧に撫でながら、涼一は懐かしむように目を細めた。
「離れてもずっと忘れられなかった。どれだけ後悔したか分からない……。あの時の浅はかな自分が、俺はずっと許せなかったんだ」
「涼一……」
「恋人も作れなくて、人の紹介で結婚して。でも結局、ちゃんと愛せないまま離婚して……。きっと一生、こんな風に生きていくんだろうと思ってた」
「ごめん、俺のせいだ……」
 額を擦り付けるように俯くのを制し、ポンポンと背を叩く。
「何言ってんだよ。ちゃんと言わなかった俺が悪い。何も言わずにキスしたら、そりゃ誰だって驚くさ」
 咄嗟に上げられた顔、桃色に染まる頬が愛しくて、そっとその髪を梳いた。
「ごめんな。驚いたよな」
 まるで12年前の少年に言うように、そっと覗き込んだ顔。何かを堪えるように引き結ばれた唇が、彼が涙を我慢しているのだと分かったから。
「なぁ。……今、言ってもいいかな」
 12年前に言えなかった言葉を。
「今も同じ気持ちじゃなきゃ、そんなの……」
 意味ない、と続くはずの言葉は、けれど柔らかな温度で包み込まれた。涼一が自分のそれで聡の唇を塞いだのだ。
 一秒でも早く伝えたくて。
 一秒でも早く泣き止ませたくて。
「……ん、っ」
 僅かに離れた途端、唾液で濡れた唇を冷たいと感じる。
 それを再び暖めたくて、ふたりの隙間を埋めたくて、涼一は我も忘れて没頭した。
「ん、…ぁ、……っ」
 ふわりと開いた隙間から潜り込んだ舌先。
 歯列を割ってザラリとした粘膜を誘い出し、甘い唾液を分け与える。逃げを打つ腰を押さえ込んで貪ると、コクリと喉が動くのが分かった。
「聡……」
 愛しい。愛しくて堪らない。
 キスの合間に名を呼べば身体を震わせて応えてくる。彼の身も心も全身で自分に向っていると感じるからこそ、涼一はキスを止めることが出来ないでいた。
「……も、ダメ」
 軽く押し返されたのを名残惜しく思いつつ、ゆっくりと身体を離す。見下ろした聡は薄い唇を赤く光らせ、潤んだ目で涼一を見上げていた。
 軽く息が上がっている、その姿にすら感動する。
「俺も相変わらず成長ねぇな。……ごめん聡。愛してる……」
 だからこそ、事後の告白には最大級の想いを込めて。
「遅い。バカ……」
 お返しのキスは悪態と共に、最上級の甘さでもたらされる。
 静かに発光するディスプレイだけが、ふたりの蜜時を映していた。

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涼一は口より先に手が出るタイプ。でもこの場合は口より先に唇か!?(笑)
やだなぁ。そんな話じゃないですよ〜(今更言っても遅いですか……)

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complete #16 

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「……え?」
 知っていたということはどういう意味か。
 あまりに予想外の言葉に目を見開く涼一を前に、ひとつ息を吐くと聡は静かに言葉を続けた。
「おまえの気持ち、分かってたよ」
「じゃあ、どうして……っ」
 あの時、逃げ出したりしたのか。
 続けるべきか僅かに迷ったのを読んだように、聡は、すい、と目を細めた。
「恐かった、って言ったら信じる?」
「なん、で……」
「おまえが思っている以上に、おまえのことが好きだったって」
 栗色の髪がサラリと揺れる。
 付け加えられた内容が俄には信じられず、涼一はギュッと眉根を寄せた。そうしていないと自分本位にばかり考えて、うっかり泣いてしまいそうだった。
「俺……おまえにフラれたと思ってた……」
「うん。だって俺……純粋じゃなかったもん」
「聡?」
 真意を探るように覗き込む双眸、薄茶の瞳がふるりと揺れる。
 物怖じしないと評される涼一は今、誰よりも臆病で誰よりも懸命に想い人だけを見ていた。
「おまえが俺のこと普通に好きになってくれたのに、俺……全然純粋じゃなかった。やらしいことばっか考えてたんだ」
「嘘……」
 あの聡が。綺麗で、汚れがなくて、不可侵とさえ思えた彼が。
 突如明かされたギャップに瞠目すると同時に、外見から作られた虚像を見ていたのかも知れないとも思う。生身の彼はもっと生々しく熱を持ち、強烈な眼差しで自分を射貫いていたのだ。
「……ふふ。軽蔑する?」
 だから問い掛けに首を振る。もういいと言われるまで何度も、何度でも。
「俺、涼一に触れたくて、触れられたくて、キスもしたくて、それ以上のことももっと───」
「聡……っ」
 赤裸々な告白ごと、強く強く抱き締めた。
 腕の中、小さく震える肩を両腕できつく包み込む。
「俺だって、おまえに触れたかった」
「りょ、いち……」
「おまえを独占して、滅茶苦茶にして、俺だけしか見れないようにしたかったよ」
 それが相手を傷付けることだと知っていてなお。
「おまえ、も……?」
 ゴクリと喉を鳴らす音。同じ気持ちだと知らしめるそれ。
「ハハ…。何やってたんだろうな、俺達」
 苦笑が夜明けのフロアにゆっくりと吸い込まれてゆく。
 手を伸ばし合うこの瞬間、ふたりの背をそっと押し出すように。

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一言「好きだ」って言ってれば空白の12年はなかったわけですが、
それが言えないからこそ思春期だったりもするんですよねぇ(-人-)

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complete #15 

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「俺……何かと真剣に向き合うことが恐いんだ。ホント言うとこのバグだって、涼一のじゃなければ放っておくつもりだった」
 躊躇いながらも本音を吐露する。
 これまで見たこともないような苦痛に歪む聡の表情に、涼一は身動ぎさえせず懸命に耳を傾けた。
「涼一はさ、なんて言うのかな……いつも自信に溢れてて、颯爽としてて、いわばリーダーみたいなもんじゃん」
「おまえそんな風に思ってたのかよ」
「そうだよ。高校の時だって───ずっと憧れてた」
「嘘!」
 あまりに思い掛けない言葉に、涼一は弾かれたように背を伸ばす。
「本当だよ。おまえは俺の憧れだったんだ。涼一」
 決して揶揄っているのではないと分かる真剣な顔。それでもまだ信じられなくて、涼一は何度も頭を振るしかなかった。
 けれどそんな反応などお構いなしに聡は正面から静かに告げる。
「おまえがピンチなのは耐えられなかった」
 そう口にしてから眉根を寄せ、首を傾げて。
「うーん、ちょっと違うかな。耐えられないんじゃなくて……嫌っていうのか……」
 口元に手を当て思案に暮れた相手は、やがて導き出した答えに納得と言わんばかりに笑みを浮かべた。
「あぁ、そうか。俺が助けたかったんだ」
「……え?」
 恩着せがましく思わないで欲しいんだけど、と付け足すと、聡は改めてふわりと笑った。
「おまえいつも俺のこと助けてくれたじゃん。文化祭の準備だって、数学の宿題だって、購買のパン争奪戦だって、そういうの全部、さりげなく」
「あ、あれは……」
 口を挟もうとして、けれどその内容が決して誇れたものでもなく、涼一は思わず口籠もる。
 かつて犯した過ちに通じる、確たる原因を晒すことになるのだ。それでも───聡の口から語られた過去、あの頃にタイムスリップした今なら、言わないわけにはいかなかった。
「違うよ、聡。俺がやってたのは、おまえみたいに純粋な思いじゃない」
「涼一?」
「俺は下心があったからさ」
 ゆっくりと、重い口を開く。
「おまえの視界に入りたい、おまえの印象に残りたい、そしてあわよくばおまえに好きになって欲しい、って……」
 浅ましいよな、と続ける声は無様に掠れていた。
「今思うとかわいくて笑っちゃうだろ。……必死だったんだよ、おまえの気を引きたくて」
 とっくに飽和を迎えていた恋。
 距離を縮めていけば、いつか溶け合えると信じていた。
「涼一……」
「……ごめんな、変なこと言って」
 遠慮がちな声に話の潮時と立ち上がった涼一は、だが再び動きを縫い止められることになる。
 何かを堪えるような声がふたりの間に波紋を作った。
「そんなの……知ってた……」

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思春期です。青春真っ盛りです。って、それを語ってるふたりは立派な
三十路の男なんですが(あわわ)こういうのも恋バナなのかしら(-ω-;)

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