seasons #51 

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 慣れとは恐ろしいもの───。
 そんな言葉を口にしたのが巧矢の方だというのだから、その状況たるや推して知るべし。
 広いスタジオ、輝くライト、絶え間なくシャッターを切る音。そんな究極の状態で写真を撮られ続け、緊張感もマックスならキスの余韻で沸点も上昇、どこかでネジが外れたのだとしてもおかしくない。そんなこんなで一気にボーダーラインを越えた安曇は一気に逆ベクトルを目指して突き進んでいた。
 カラーの花束を雑に抱え遠くを見る目付きがイッている。陶酔し切った表情はもはや素人のそれではなく、どこか貫禄すら漂わせている。繰り出されるオーダーに次々応えているあたり、素質があるのかも知れないななんて渉でさえほくそ笑むほど。
 ゆえに。
「じゃあ次、キスシーン撮ってみようか」
 そんな、普段なら脱兎の如く逃げ出すであろうリクエストにも。
「おー、そろそろいっとこか」
「安曇さん!!!?」
 むしろ腰が引けたのは巧矢である。
「ちょっと、いいんスか。こういうの絶対ダメなくせに」
「えぇやん、巧矢。やろ」
 と言ってる唇まであと数センチ。シャツの襟元を引き寄せる、その仕草は反則だろう。
「うーん、いいねぇ。たくさん撮るから長くね」
「だそーだ」
「ちょ、安曇さ……んっ」
 制止も聞こえぬとばかり持っていたブーケを押し付けると、安曇は相手の肩に両腕を巻き付けた。そのまま引き、唇を重ねる。触れた瞬間電流が走るようなむず痒さに全身が泡だった。
 しっとりと感触を楽しんで、ペロリと舌先で味わって。僅かな隙間、口内の熱さに酔いしれて。
「……ん、」
 ちゅ、と小さな名残を残してふたつの個体に戻る頃、安曇はようやく我に返り、巧矢は無駄に戦闘態勢を整えていた。もはや人目なんて関係ないとばかり擦り寄ったところをカウンターで返され、まさに不幸としかいいようのないタイミングのズレを実感する今日この頃。取り敢えずこれだけはとブーケを渡したところで、前触れなくスタジオのドアが開いた。
「お邪魔するわよー」
 姿は見えないが声だけですぐに分かる。
「コウさん!」
「たくちゃんお疲れー。どーお、撮られてるー?」
「もー聞いてくださいよ! 凄いことになってんスよ!」
 ようやく衝立の向こうから、ひょこ、と顔を覗かせたコウは、だが勢い込んで喋ろうとする輩の斜め後ろ、目を潤ませる美形男子の存在をコンマ0.1秒で認識し、一気にテンションを引き上げた。
「きゃー、"安曇さん"!? 超イケメン!」
 1回会ったことあるはずなのに雰囲気が違ってびっくりしちゃった、とトキメキで胸を押さえる訪問者に対し、早くも持病が出たかと伴侶は軽い頭痛を覚えつつ。
「こーうーすーけー」
「あらヤダ、ごめんなさい。アタシったら正直で〜」
 悪びれもせずシナを作ってみせるものだから、その場にいた全員がドッと笑った。無論、そんな和やかな瞬間をカメラマンが見逃すわけがない。ファインダー越し、自らの恋人が自己紹介を始めたのを微笑ましく見守りつつ、ついでにそっちも撮ったりして。
「改めまして、コウですー。いつも綺麗なお花届けていただけて嬉しいです♪」
「うちこそ、いつもおおきに。巧矢から聞いてますよ」
 軽く振り返った相方への視線につられたコウは、目敏く胸ポケットのアレンジをチェック。
「その花はもしかして!!?」
「もっちろんブーケとブートニアッスよ!」
「やーん。ホントに? 嬉しい〜〜〜!」
 胸の前で手を組むなり身悶えし始めた相方に対し、そろそろ切り上げるべしとの第六感を働かせた渉は休憩時間の終了を告げる。
「コウ、喜ぶのはいいけど脇でやってね」
「なによ、冷たいんだから〜〜」
 ツンと唇を尖らせつつ、ニッと笑ってみせたりして。器用な百面相を拝みつつ、撮影会後半戦がスタートする。
 無論、安曇が再び盛大に照れたことは言うまでもない。

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はーい、授業参観ならぬバカップル参観(そんなのあるなら素で行きたい)
安曇ちゃんは突き抜けると無敵ですが必ずリセットします、という凡例です(笑)

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拍手のお礼 

2008/07/04 00:21
イラストも…とコメントくださった柚子季さまへ

 番外編にもお付き合いいただきありがとうございました!
 小説書きのイラストで結構ドキドキもんでしたが
 悶えていただけたなら本望です! 調子に乗れる!(笑)
 そのうち安曇ちゃんも描けたらなーと思う今日この頃、
 その時はまた覗いてやってくださいね♪

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 その他、パチパチしてくださった方々、どうもありがとうございます!!
 皆さんのお陰で頑張れます。これからもどうぞよろしくです♪

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seasons #50 

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「なぁ……ところで、待たせといてえぇの?」
 降り注ぐキスの雨をかいくぐり、ポロリと零れた疑問。そういえば……と逡巡したワンコは事の発端を思い出すなり見えない耳をピンと立てて目を輝かせた。
「そッスよ、写真! 写真撮ってもらいに行きましょ!」
 安曇さんブーケ持ってね、と念を押され、何の羞恥プレイか人前でバカップル振りを見せつける羽目になる。一足先に廊下を走って行く犬にはもはや拒絶も届かず、しぶしぶ向かった先は目映いスタジオ。
「……うっわ、これで撮るってホンマに……?」
 どう見ても本格的なセット、素人の自分にはレフ版の前に立つことさえ躊躇われる、のに。
「わー! 超テンション上がるー!」
 どこかのワンコは大はしゃぎの様子。しぶしぶ付いて行くと今度はカメラを抱えた渉に褒め殺しに遭う。
「安曇さん、うつり映えするんですねぇ。モデルみたいだ」
「いいいいや、その、まったくそーいうわけでは……」
 心なしか後退る安曇を押し止めるのは自分の役目とばかり、背後に構えた相手が憎い。そんなふたりの仲睦まじい様子に目を細めたカメラマンは、大振りな仕草で中央を指した。
「さぁさぁ並んで。今夜は貸切だからね、恥ずかしがらないで、リラックスして笑ってね」
 ふたりとも背があるからサマになるなぁ、なんて。プロのモデルならどうということなく受け流すか、もしくは綺麗な笑みのひとつも向けて応えるのだろうけれど、いくら自分達だけとはいえ緊張するなという方が無理である。ゆえに。
「じゃあ巧矢くん、思い切ってホッペにキスしてみようか」
「はぁ!!?」
「わぁ、それいい!」
 他人様の前どころかカメラの前でまで痴態を晒すことになる。あぁ、なんという厄日。
「安曇さん、あの、力抜いて?」
「恥ずかしいんやからさっさとしろっ」
「もー、ホント照れ屋さんなんだからー」
「おまえに羞恥心が足りないだけやっ」
 小声で遣り合いつつ、隙を見計らって小さなキス。
「……ん、」
 次第に赤みを帯びる頬。
「安曇さん……」
 胸に広がる甘い微熱。
「なんやろ……あかん……」
 忽ち全身に廻る媚薬。
「ドキドキした?」
「ん、した……」
「もっかいしていい?」
「……ん」
 今度は続けて 2度、3度。ちゅ、と耳元に届く音を響かせて、巧矢の唇が優しく頬に触れて行く。意識していないと抱えたカラーを落としそうで、もう少しだけ温度を感じていたくて、安曇はそっと目を閉じた。
「安曇さん、凄い綺麗」
「光のせいやろ」
「そんなことないもん。へへ、こんな近くで見れて嬉しいな」
「いっつも見てるやん」
 名残惜し気に離れてゆくのを目で追って、その視線の動きにつられるように前を向いてはじめて。
 パシャリ。
「……あ、」
 この一言がすべてを表していた。
「ハハ、さすがキスの効果は大きいね」
 完全に蚊帳の外の渉が黙々とシャッターを切っていたことは明白で、つまり、恐ろしい数のノロケ写真製造中という状態である。
「……あー……」
「まぁまぁ、後から見ればいい思い出だよ。僕だって撮って欲しいぐらいだ」
「あれ? 渉さん被写体はやらないんスか?」
「そのうちやってみたいんだけどねぇ」
 ふふふ、と蓄えた髭に意味深な笑いを含ませつつ、渉は徐々に慣れてきたふたりを弄ることに専念し出した。
「せっかくブーケとブートニアだから、いろいろポーズも取ってみようか」
「……うっ。それ、人に言われるとものごっつ恥ずかしいわ……」
「いいじゃないですかー。俺は安曇さんにブートニアもらえてすんごい嬉しいわけですしー♪」
「もーそれ言わんときっ」
「やだやだー」
「子供かおまえはっ」
「だって好きなんだもんっ」
 真っ赤な頬を膨らませ。
 青いリボンをはためかせ。
 白いシャツの襟を立てて。
「よし、その表情!」
 また最高の絵が切り取られてゆく。

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こんなのただのバカップル晒し撮りですよ!!(悶絶)
渉ごめん、ホントごめん……南無ー…(-人-)

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