guys #10
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試合会場から真直ぐ帰る気にもならず、和哉は公園へと足を向けていた。
夕暮れから夜への過渡期。
それまで遊んでいただろう子供達の姿は見えず、砂場に残された足跡だけが楽しかった数時間前を思わせる。置き去りにされた空き缶に目を細めながら、和哉はベンチに腰を下ろした。
幼い頃、律誠とよく遊んだ場所。
滑り台の一番上で泣かせたら意地を張って降りて来なくなったこと。高く上がるのが恐いと言ってブランコには近付きもしなかったこと。今思えば可愛らしさに目を細めてしまうほど、当時の彼は恐がりで、泣き虫で、意地っ張りで、頑固だった。
「……あぁ、頑固なのは今もか」
くすりと笑い、頬杖を突く掌で口元を覆う。
思えば、律誠とは物心付いた時からいつも一緒にいた。
何をするにも本能で動く自分を彼は大胆だと言い、単純だと評した。実直だと誉め、純粋だと羨ましがった。彼の口から出る音はくすぐったいものなのに、その意識を濾過した言葉達は案外すとんと収まるものだから、和哉も素直に声に出す。何をするにも理性で動く彼は冷静で、凪のようで、聡明で、無垢なのだと。凪とはよく言ったもんだなと小突かれたことが懐かしい。自分達は本当に対照的だと思った。
足りないところを補い合うような関係。
普段はまったく異なる生活をしながらも、ふと気付くと隣にいるような、そう、まるで空気のように共にある存在だと語る自分を、いつだったかある友人は友達以上恋人未満と表現した。それを聞いた当時は、男同士で恋人もあるかと一笑に伏したものだったけれど、もう長いこと友情と愛情の境目を彷徨っていたのもまた事実。そんな求め過ぎず頼り過ぎない関係をふたりはとても気に入っていた。
「なのに……」
雪之が現れてからそれが崩れようとしている。
もし律誠が彼と同じクラスでなければ。もし律誠がクラス委員でなければ。もしふたりは同じ学校でなければ。ありもしないことが思考を支配する。ぐるぐると回る堂々巡りはいつまでも終わることがなく、整理し切れない感情を持て余していることを客観視する手段にしかならなかった。
「………クソ…ッ」
お互いに対する信頼感はこれっぽっちも変わらないのに、ことあるごとに行く手を阻む楔の存在によって些細な擦れ違いが積み上がる。不安だけが大きくなる。
携えていたラケットケースを引き寄せ、試合の間中感じていた喪失感をなぞった。いなくなって初めて分かる、彼が自分にとってどれだけ安定剤の役目をしてくれていたのかを。彼でなくてはダメなのだと痛感させられた。
「律誠……」
ギュッと目を閉じ、和哉はケースに顔を埋める。
見慣れた面影さえ今は遠い。焦燥に晒され、心は次第にささくれてゆく。
guys #11 に続く
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