guys #19
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委員長とトラブルメーカー。
異色の組み合わせとも思えるふたりが急速に接近していることは、その後の態度にも表れていた。
ファーストネームで相手を呼ぶということの威力は予想以上に大きく、相手を強く意識することで、これまで盲目的に張り巡らされていた茨は少しずつ解かれようとしている。一歩一歩はとても小さくても積み重ねることで、やがて穏やかな雰囲気さえ纏うようになり、少しずつ変わり始めた雪之に誰もが蝶の羽化を見守る心境を重ねた。
周囲もまたそれに牽引されるように、あの委員長から信頼されたのならと雪之に目を向けるようになりつつある。お互い信頼し、期待を返すなんて難しいようでいて、本当は極小さなコミュニティでも核となるべき大切なこと。それ実践出来た喜びと自信を共有することで、クラス全体はよりまとまりを見せつつあった。
そんな放課後。
誰もが当然といった風に積極的に展示準備に熱中する中、その輪に雪之がいるということ。
「よかったね、律誠」
そんな様子を傍らで見守っていた有栖が笑う。
「……あぁ」
穏やかに目を細めていた、その時。
「律誠! おまえ暇ならこっち来て手伝えっ」
100枚単位のメッセージカードを延々書き続けていた雪之から強制的なお呼びが掛かる。委員長はこれから全体会の打ち合わせじゃ、と誰もが固唾を呑んで見守る中、一目でそれと分かるほど───友人の言葉を借りればだらしないと形容されるほど満面の笑みを浮かべた律誠はふたつ返事で指名を受けた。
「………やだねぇ、色ボケは……」
これじゃ記事にもなんないじゃん、と愚痴を零しつつ、有栖もまた己の仕事に没頭していった。
そんな風に世界は、平和な日常を刻んでいたのに。
まるで相反する性質を持つ電極のように決して交わらない代わりどこまでも同時進行する現実は、時間をほんの少し変えるだけ、見方をほんのちょっとズラすだけでまったく別の側面を見せた。或いは光の届かない闇の横顔とでも言うべきか。歓迎すべからぬ事実に少年の足はアスファルトに縫い付けられたまま、ぴくりとも動かなかった。
こんな光景を、前にも目にした。
和哉は本能的に気配を殺す。考えるより先に見つかってはならないと身体が判断した。
前方数十メートル先、見知った少年が明らかに柄の悪そうな年上の男達と連れ立って歩いている。見間違えようもない、試合の一件以来目の敵のように思ってきた雪之本人に違いなかった。どことなく緊張感すら漂わせている一行は馴れ合うこともなく、言葉すら交わさずに、ただ足早に暗闇を目指す。これから何をしにどこに向かうのか、具体的な情報は何ひとつ得られないままあの時と同じように後ろ姿を見送りながら、和哉はモヤモヤとした思いばかりを持て余していた。
雪之の素行を告げた時の律誠の顔が今も忘れられない。
深く傷付いたような、信じたくないような、そしてそれが事実だとしても正面から受け止めるべきとの清廉とした覚悟があった。凡そ同じ歳の人間が見せるとは思えないその表情に自分は息を飲み、悔しさすら感じたのだ。
あんなヤツに構うなよ───。
それが精一杯の言葉。不器用なまでの想い。
あぁ、どこまでいってもキリがない。律誠を見てはその視線の先に雪之を見付け、こうして雪之に会えば連鎖的に律誠を思う。それぞれが個体を持った人間でありながら常に表裏一体のようなふたりに苛立ちを覚え、和哉はひとり舌打ちをした。
暗い夜に響く、それは孤独を煽る音。
guys #20 に続く
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