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 2007年11月 

guys #28 

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 夜空を彩るいくつもの光。
 暗闇を教えるように次々と打ち上がる花火を見上げながら、もうどのくらいそうしていただろう。懐かしさを共有し、名残惜しさを共に抱く。散ることを知りながら咲くことを恐れないこの花火のように、無事緞帳が下りることだけを目指していたはずのに、胸に込み上げる寂しさはそう容易く誤魔化せるものではなかった。
 時が経てば経つほど増してくる想い。
 人はこれを切なさと呼ぶのだろうか。
「……律誠?」
 躊躇いがちな呼び掛けに目をやれば、不安気な漆黒の瞳。いつの間にか黙り込んでしまった自分を気遣う優しい色。
「あぁ、何でもないよ」
 だからそっと目を細めて。早くなる鼓動を誤魔化すように、律誠はつと空を仰いだ。
「綺麗だな……」
「うん。今年の夏は花火やんなかったし、得した気分」
 ヘヘ、と笑う横顔に引き込まれる。雪之の顔を見返すたび胸が甘く疼くのを、もう自覚しないではいられなかった。
「雪之……」
 後夜祭は徐々に熱を帯び、煽るように歓声が大きさを増す。次々に開いてゆく盛大な花火をバックに、振り向いた君の輪郭が光に溶けた。
「……ゆきの、」
 一際大きな打ち上げ花火。
 掻き消されそうな小さな声。
 見つめ合うふたりに音はなく。
 想いがすべてを越えてゆく。

「雪之、おまえが好きだ───」

 キラキラと光りながら消えてゆく火薬。
 まるで真夏の雪のように。
「………驚かせてごめん。どうしても伝えたかったんだ」
 たとえ拒まれても。避けられてでも。
「雪之と向き合いながら、この気持ちが友達だけのものじゃないと気付いた。おまえの "たったひとり" になりたかったんだ」
 それが傲慢でも。我が儘でも。
「でも、押し付けるつもりはないよ。知っておいてもらえたら嬉しいから」
「……な、ちょっと」
「だから返事は無理しなくていい。これまでどおりでいてくれたらそれで……」
「ちょっと待てって言ってんだろっ」
 穏やかな笑みですべてを締め括ろうとするのを、力任せの腕が止めた。
「この……バカ!」
 怒気の含まれた語調。意味を図りかね瞬きを繰り返す律誠に、痺れを切らした相手は眉を寄せて畳み掛けた。
「だからバカだっつってんの。おまえってどうしてそう、こーいうことは鈍いんだよっ」
 まるで子供のように唇を尖らすのが可愛くて、こんな時だというのに笑ってしまう。それは雪之の神経を逆撫でするのに充分で、再度のお叱りと共に足を踏み付けられるというオマケまで付いた。

「人の気持ち、無視しやがって」

「…………え?」
 そっぽを向いた真っ赤な横顔。
「雪之…?」
「ちくしょ……先越された」
 あぁ、思い違いでないのなら。勘違いでないのなら。
「それって……」
 神様、どうかこの自分勝手な解釈が外れていませんように。
「あーもう。そうだよっ。今更カッコ悪ィ」
 俺も好きなんだかんな。
 ボソリと告げられたその言葉を、待ち侘びた思いと、それでも俄には信じがたい気持ちで一杯になる。口元を手で覆ったきり動かなくなった委員長を小突いて再起動を掛けた問題児だったが、今度は今度で自覚が追い付いた相手の満面の笑みに閉口する羽目となった。
「嬉しいよ、雪之」
「……おまえ、そのニヤケ面なんとかしろよ」
「何言ってるんだ。両想いだったなんて信じられないじゃないか」
「あぁ。俺も信じたくなくなってきた……」
 憎まれ口さえ照れ隠しだともう知っている。緩む頬を抑えることさえ放棄した律誠は、これが有栖に教わったジンクスなのだと口外した。
「後夜祭の花火を見ながら告白すると上手くいくって」
「はぁ!? ここ男子校なんですけどっ」
 至極尤もなツッコミも当然のようにスルーされ。
「よかったな、上手くいって」
「冗談じゃねーよ! つか何、あいつ知ってんの!?」
「気付いてるんじゃないか? 情報屋だし」
 動揺したままの雪之を奈落の底に突き落とすような発言で幕を閉じる。
「これからよろしくな、雪之」
 そう言って右手を差し出すから。
「……おまえ、ズリィよ」
 受けずにはいられない握手。それがどんな意味を持つかもう誤魔化せない。
 最後の花が夜に咲く。
 それがふたりで作った最初の思い出。

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ようやく告白です〜〜! 長かった……(遠い目)
連載当初を思うにつけ、律誠と雪之のボケとツッコミのような遣り取りが新鮮です。
有栖はきっとふたりを見守ってるんだろうなぁ。スクープされたら楽しいのに(笑)
『guys』はあと2話で完結します。お付き合いよろしくです!

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guys #29 に続く