cross #10
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日常は些細なことの積み重ねで出来ている。
不意に飛び込んできた異質な存在さえ、一度受け入れてしまえばいとも容易く取り込んでしまうように。
軽いブランチを終え、紅茶を啜る。
慣れた手付きで煎れてくれるアッサムの芳しさに目を細めつつ、ふたりはポツリポツリと話をした。と言っても冬夜が絶えず口を開き、キリエは柔らかに微笑みながら聞き役に廻ることが多かった。
元来賑やかな性格なんだろう。
世話好きで、屈託がなく、他者との間に垣根がない。ほんの数時間一緒に過ごしただけでも、くるくると変わるその表情から彼の性格の一端を伺い知れた。時折、楽しそうに声を立てて笑うのを聞きながら、キリエは自分がもう長いこと表情を変えることさえなかったと思い返す。それは例えて言うなら行きながら死んでいるような状態だった。
「……君はよく笑うね」
「俺? そう?」
「あぁ。そうしていると年齢よりずっと幼く見える」
そう言ってくすくす笑えば、途端、ぷぅと頬を膨らませる。気にしてんだぞ、と唇を尖らせる色白の頬に見とれつつキリエは長い髪を掻き上げた。
「ごめんごめん。誉め言葉だよ」
納得いかないとばかり眉根を寄せながらも、手元のティーカップを褒められた、たったそれだけのことで彼はまたプロテクタを解く。凡そこれまで会ったことがないほど他者に無防備なその姿は、無垢という言葉こそ相応しかった。
そう、彼には、警戒心というものがまるでなかった。
その証拠に、キリエが血まみれで倒れていた理由を聞こうとしない。唯一胸の怪我を心配したが、既に塞がった傷跡を不思議そうに眺めたきり、それ以上の詮索をすることはなかった。
他人に興味がないのではなく、許容量が尋常ではないと言った方が表現として正しいだろう。それほど冬夜の、人を受け入れる力は並外れていた。
「……あ、おかわりいる?」
空のカップをひょいと覗き、さり気なく席を立つ優しさ。
「あぁ、ありがとう」
穏やかな時間が心を少しずつ頑なな心を解してゆく。目を合わせ、茶色の瞳が微笑むだけで、キリエは長い間忘れていた安らぎを少しずつ取り戻していった。
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キリエと冬夜、ふたりの口調や物腰が自分にしっくりきてるなと実感します。
書いているうちにキャラが自主的に動いてくれるので楽しいし(^_^)
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cross #11 に続く
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