cross #19
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翌朝、目を覚ますと冬夜の姿はなかった。
ガランとした家。いつもの気配がないだけでこんなにも広く感じるものかと息を詰める。
「……出掛けたのか」
独白し、キリエはシーツを纏いながら身を起こした。強張る身体を余所に太陽は既に高く、昨夜の情事など嘘のように穏やかな日常が広がっている。外界から隔離された内面を感じるのはこんな時。瞼に焼き付いた鮮烈な映像が心の安定を許さなかった。
腕に残る感触。
彼の声、彼の息遣いに身体が震えた。彼の匂いに酔い、彼の温度に我を忘れた。
これまでの自分からは想像も出来ない事実。
出会ってから間もなく、まだお互いのことを深く知るほど時間を共にしていないにも関わらず、急速に惹かれてゆく自分自身を止められなかった。過去の恋人としてではなく、生身の男として彼を見、彼を欲しいと思った。出会った時の衝撃も、過去の遺恨も、何もかも越えるものがあることを知った。
けれど一方で迫り上がる、彼を失うことに対する恐怖。
どんなに傍にいても、いつかなくしてしまうかも知れない。いつかいなくなってしまうかも知れない。そう想うたび胸がギュッと押し潰される。今いるのに。ここにいるのに。どうして。
───だから、だろうか。
目が覚めて彼がいなかったことに、本当は足が竦んだ。
こうしてある日突然自分の前から姿を消されたら、自分はまた孤独に埋め尽くされた毎日を送ることになる。それはまるで泥土の中を這い回る終わりなき苦渋の日々。なんて意味のない生。
「……ふふ」
漏れたのは自嘲。現実と決別するように首を振る。
そもそも、彼を手に入れたわけではない。想いを告げてさえいないのだ。強引に身体を繋げただけで、その実、この気持ちのひとかけらさえ彼に伝えてはいなかった。
なくすなんて、そんな考えはおこがましい。そう囁く自分がいる。
「でも、……それでも」
自分のものじゃなくていい。傍にいられればそれでいい。
だからここからなくならないで。想い続けることを許して。
「冬夜……」
あぁ、欲しがらなければ失うことなどないのに、それでも求めずにはいられなかった。
たとえどんな苦しみがこの先に待ち構えていたとしても───。
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欲しいと思う以上になくしたくないと願っている。
恋愛の醍醐味をこれから書いていきますよ〜〜!
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cross #20 に続く
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