cross #24
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理由を求めるほど深みに嵌る。
著しい自身の変化が潜在的なものであったと仮定した冬夜は、自分の生い立ちについて調べ始めたものの、その調査は半日も継続せずに行き詰まることとなった。
家中探しても手掛かりがない。過去と呼べるものがない。
そして何より、出生から今までの記憶そのものがなかったのだ。
「え…?」
昨日のこと、一昨日のこと、そんな最近の出来事なら鮮やかに思い出すことが出来る。料理の仕方、洗濯の仕方、そんなコツの積み重ねも忘れていない。この家に越してきたことも分かる。あれは確か 2年前。そういえば、前の家も 2年程度で引っ越したっけ。短い周期で各地を転々とするのが当たり前のように身体に染み付いていたけれど、それに理由を求めたことがなかった。まるで予め仕組まれたように、プログラム通りに動いている自分。
「……俺……」
どこで生まれて、誰と暮らした?
家族や友達はどんな人だった?
分からない。気がついたらひとりだった。それを不思議だとも、寂しいとも思わなかった。少なくとも……彼に逢うまでは。
キリエを助けたのは本当に偶然だった。淡々と進んでゆく日常に不満があるわけでもなかったのに、もしかしたら自分は心のどこかで変化を求めていたのかも知れない。そこに飛び込んできた非日常。手を伸ばさないわけがなかった。
彼と暮らした僅かな時間で自分がどれだけ変わったか分からない。誰かに心を動かされることなどないと思っていた。誰かの熱を焦がれ求めることなどあり得ないと思っていたのに。
「キリエ……」
俺はこれからどうしたらいい?
どうやったら戻って来てくれる?
恐い。何も見えない。何も分からない。会いたい。もう一度会いたい。キリエに触れたい。不安で不安で堪らない。だからどうか抱き締めて。大丈夫だよと囁いて。いつものあの笑顔で。いつものあの温度で。
「……キリ、エ……」
床に蹲り、ただひたすら不安と孤独に晒される。キャパシティを遥かに超える焦燥感に唇を噛み締めた、その時───
視界の端、何かが動く気配に目を上げれば人が立っていた。
物音ひとつ立てず家屋侵入を試みた相手は、今まで会ったことのない人物。長い黒髪のその人は穏やかな笑みを浮かべたまま、ただ真直ぐ冬夜を見ていた。
そっと立ち上がり、対峙する。
喉の鳴る音が現実からやけに乖離して聞こえた。
瞬きもせず、身動ぎもせず、冬夜は搾り出すようにやっとそれだけを口にする。
「おまえ……誰?」
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新しい登場人物が増えました(#24にしてやっと)
そして明らかになる冬夜の過去。次回いろいろバラします。
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cross #25 に続く
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