cross #33
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腕に伝わる振動。
冬夜が震えているのだと気付いたキリエは、根気強く待つことで彼から事の顛末を引き出した。
「……そう。遣いが来たのか……」
「キリエが俺を殺しに来るって……だから、だから俺……っ」
相手が自分の天敵だと知ってしまった今となっては恐怖ばかりが先にたち、言葉も上手く紡げない冬夜を前に、キリエは安心させるようにもう一度胸に引き寄せた。
「僕は君に危害を加えたりしない。君を失いたくない」
「だって、おまえ……」
スレイヤーなんだろ、と続く声に気付き、キリエは唇を持ち上げて笑う。
「……うん、そうだね。……でも、それも、どうでもいいんだよ」
首を傾げる前髪を掻き上げると、額にそっと唇を寄せた。
「君がいなければ意味がない。それぐらい、僕にとっては君が大事だ」
「……キリエ…」
突然の告白にもはや続く言葉はない。命懸けの恋であることはふたり共に感じていた。
「まだ、怖いかい?」
問い掛けに首を振って否定するものの、一瞬躊躇いがあったことを見逃す男ではない。俯く顔を覗き込み、それなら、と目を細めた。
「僕の血を飲んだらいい。僕も吸血鬼になる」
「な…っ」
血を吸われるということ、それは即ち死を意味する。けれど、そんなことすら何の躊躇いなく言ってのけるほど、キリエには覚悟が出来ていた。
「ダメだ、何言ってんだよ。おまえ分かってない」
「分かってるよ。君と同じになるんだ」
「違う。そんなんじゃない。一生このままなんだぞ」
「いいよ」
「キリエ!」
悲鳴に近い声が上がる。だがそれすら落ち着いた声音でかわしたキリエは、涙の滲む目じりにくちづけし。
「いいんだよ」
愛しい人をなくすくらいなら、自分の命など惜しくないのだと。
唇を噛みながら懸命に想いを受け止めた冬夜は、いよいよ意を決して顔を上げ、キリエを家へと迎え入れた。
荒波に翻弄されるふたりには、話す時間が必要だった。
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愛しているから自分の命は惜しくない、そう覚悟を決めれるって凄い。
そんな風に誰かに想われることのなかった冬夜はどう応えるか……。
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cross #34 に続く
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