cross #38
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絶望の果て、夜が明ける。
人がどんなに嘆き悲しんでいようとそんなことなどお構いなしにやって来る朝、冬夜は動くことも出来ないでいる。
泣き腫らした目。血塗れの口元。
そんな姿を隠しもせず恋人の亡骸を抱いたまま、一睡もせずに夜を明かした。乳白色の光は労わるようにそっと冬夜を包むのだけれど、心を削ぎ取られるような、己の一部を抉られるようなこの途方もない喪失感を癒すには遥かに足りない。足りない。まるで埋まらない。心の傷跡は深く大きく、いつまでこうしていれば彼は蘇るのか、ここに戻るのか、何も分からなかった。
「……キリエ…」
ポツリ、呟く。
「キリエ……!」
無を埋めるように叫ぶ。名を呼んでいないと気が狂ってしまいそうだった。
───その時。
「……う、ん……」
声がした方を振り返り、冬夜は絶句することになる。キリエが目を覚ましたのだ。まるで何事もなかったかのように平然と。
「な、んで……」
死人が吸血鬼になるには少なくとも数日、大抵は一週間程度の時間が必要とされている。一夜明けて "起き上がる" など考えられなかった。だが混乱する冬夜を他所に自らの出生におけるキーワードを思い出したキリエは、それらから弾き出される答えに苦笑して見せた。
「……僕としたことが、うっかりしていたな」
「え?」
事態が飲み込めない家主を他所に、彼の人は鮮やかに唇を引いて立ち上がる。東の空から上る太陽を眩しそうに見上げつつ、まるですべてを振り切ったように清々しい顔で。
「死ぬわけないんだよ」
「それ……どういう……」
「だって吸血鬼だもの」
ポカンと口を開ける冬夜を見つめながらくすくす笑う、悪戯をするような目付き。
「僕はスレイヤーだろう。母親は人間、父親は吸血鬼だ。僕の身体には半分吸血鬼の血が流れている……つまり、君の」
「……それって、えと、」
「そう。生まれながらに君の血を授かっていたんだ。だから死なない」
「キ、キリエ……」
「凄いと思わないかい。君は僕のおじいちゃんかも知れないなんて」
「そこかよ!」
「ふふ……。でもこれで、始祖の存在を脅かす者じゃなくなったことが知れ渡っただろう。それだけでも僕は嬉しい」
スレイヤーである前に吸血鬼である身は、決して始祖を封印しはしないのだと。
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血が繋がってるってそういうことだよね、というまとめの回。
これでキリエが助かるのは確定。残るは冬夜と一族です。
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cross #39 に続く
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