cross #40(完結)
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「じゃあこれから俺達、人間として生きていくんだな」
「そうだよ。もう誰も傷付けなくていいんだ」
「よかった……。もう思い残すこともないや」
「そう…?」
晴れ晴れとした表情とは裏腹に、どこか含みを持たせてキリエが笑う。
「僕はこれから、死ぬまで君と一緒に暮らす計画だけど?」
「え、」
「愛を育むにはちょっと時間がなかったしね。ハードな恋愛もいいけど、僕としてはもう少し穏やかに愛し合いたい」
「な、ちょ、キリエ」
「それとも冬夜はアレかな。生きるか死ぬかの方が燃え上がるタイプかな」
「お、お、おまえ何言ってんの!?」
「ふふ。顔が真っ赤だよ」
「あったり前だろ!」
「かわいいな、冬夜」
「だーっ!」
耳まで赤くして地団駄を踏む恋人を再度ぎゅっと抱き締めて。耳元に唇を寄せ、身を硬くした隙を狙ってテナーの優しい響きを贈る。
「ねぇ、なんだろうこの気持ち。終わりのある人生だと思うと1秒過ぎるだけでも勿体ないのに、君と一緒ならそれでもいいって思えるんだよ」
どんな瞬間も愛する人と共にあるなら最上の時間。
「今日も、明日も、その先も、ずっと君と一緒にいたい」
「キリエ…」
「愛してる。冬夜」
見下ろした瞳が月を宿してきらりと閃く。瞬く間に涙を浮かべ、揺らめく睫が闇を縁取ってふるりと震えた。
「おまえ、ズルイよ。そんな風に言ったら俺が断らないって知ってるくせに」
「そうだな」
「バカ」
「うん」
「恥ずかしいの、おまえは」
「あぁ、そうかも知れない」
「でも、そういうのは、……嫌いじゃない、かも」
「……うん、ありがとう」
何度目かも分からない長い長いキスを交わし、ふたりはようやく顔を上げた。
「じゃあ冬夜、支度をして?」
愛の逃避行に出ようじゃないか。
キザに付け加えるキリエが可笑しくて、今泣いたカラスがもう笑う。
「今度は夜逃げかよ」
「力がなくなったとはいえ、始祖を慕って一族が集まらないとも限らないだろう。新婚に邪魔者はいらないからね」
「……それって独占欲?」
「何とでも言ってくれ。僕は譲る気はないよ」
揶揄い半分の相手にも真っ向から返したキリエは、だが次の瞬間絶句することになる。
「俺だって譲る気なんかねーもん」
色っぽいウィンクがダメ押しになり。
「まったく……君は本当にかわいいな。……なら、ハネムーンはどちらへ?」
「世界一周!」
「ふふ…。一周と言わず、お望みとあらば月までも?」
「キリエ、俺を連れてけ」
「仰せのままに……」
手に手を取って連れ立って
涙は今夜の砂糖菓子
月の指す間に歩きましょう
ただ一筋の明日への道を
それ以降、ふたりの姿を見た者はいない───。
end.
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これで『cross』シリーズ完結です。お付き合いありがとうございました!
最後はこれでもかと甘々にしてみました。サービスで(笑)
明日はまたいつもの長い「あとがき」をお送りする予定です。
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cross あとがき
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