seek #02
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昔から分かりやすい性格とは言われたものの。
「ここまでやると、自分でもさすがになー……」
一夏は溜息と共に出版社のビルを見上げ途方に暮れていた。
空はどこまでも高く。
風は穏やかに吹き抜けて。
あぁ、ナイト出版の看板が眩しい。これをあと小1時間眺めるのかと思うと涙が出る。
「はー…」
今日は待ちに待った打ち合わせ当日。
粗相があってはならんと早め早めを心掛けた結果、張り切り過ぎて約束の1時間前に到着するというトンチンカンな結果を出した一夏は、緊張のあまり喫茶店で時間を潰すということすら出来ず、結局ビルの前で人間観察に精を出して過ごした。
「それにしても寒過ぎる……」
ダウンの襟を掻き合わせてくしゃみをひとつ。
泣きっ面に蜂とはまさにこのことである。
「……あ、も、いいかな」
腕時計が5分前になるまで粘って、ようやく悴んだ足を動かす。
ただでさえ心臓が飛び出そうなほど緊張している上にこの寒さ。ギクシャクとしたロボットのような動きはどちらのせいにすればよいのか、悩ましいほどであった。
だが───ようやく辿り着いた受付にて一夏は再度絶句することとなる。
「……え?」
「大変申し訳ございません。本日はお会いすることが出来ません」
それってガセ?
いやいや、斉藤さん嘘吐くような人じゃないし。会ったことないけど。
それともドッキリ?
いやいや、俺騙してもネタ的に面白くないし。みっともないけど。
あまりのショックに放心したまま一人二役を演じていると、受付の女性は言葉を続けた。
「本日の午前中までは勤務していたのですが、急病でして……」
「あ、そういうことですか……」
よかった。俺よかった。
いやいや、斉藤さんがよくないよねこの場合。
「大丈夫なんでしょうか?」
斉藤さんは。担当さんは。デビューへの片道切符は。
大人の事情が見え隠れするけどそんなの関係ありません。
「それが、詳しいことは分かりませんが……恐らく入院することになりそうです」
ヒー!俺の人生はどうなるんだー!
天国から地獄真っ逆さまな作家の卵を前に、受付嬢は困ったように、これはあまりお伝え出来ることではないんですが、と前置きして耳打ちした。
「……実は胃に2つ3つ、開けたみたいなんです」
「あ、開けたって、まさか穴を!?」
「原稿が落ちたみたいで……このところ休日出勤続きで、過労かとも……」
出版社とはかくも恐ろしい職業なのかと震えていると、そういえば、と続く声があった。
「本日11時頃、月丘様にお電話差し上げたようですが……。その時はもう出られていたのですね。遠いところをお越しいただいたのにこのようなこととなり、誠に申し訳ございません」
「い、いえ。とんでもない……」
なにせ通常であれば30分で着く距離だ。
13時に待ち合わせるのに11時に出たヤツが悪いのだ。斉藤さんごめんなさい。
「……にしても、困ったなぁ」
まだ駆け出しですらない自分には出版社の事情は分からないが、ひとりの担当が病欠になっても雑誌の発行は滞らない。ということは、他の担当者達が総出でその穴を埋めるのだろう。
ついでに斉藤さんの胃に開いた穴も埋めてあげて欲しい、と遠い目をしつつ、あまりの衝撃に自分の面倒は誰が見てくれるのかまでは相変わらず思考が行き届かない一夏であった。
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浮き沈みの激しい主人公というのも体力勝負でいい感じです(笑)
次回は攻め様ご登場〜。お付き合いよろしくです。
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seek #03 に続く
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