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 2008年01月 

seek #14 

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 悶々としたまま時間はあっという間に過ぎていった。
 これまでのこと、そして今の自分をひとつひとつ並べ、頬杖を付いて眺めたところで、何故こんなにモヤモヤとするのか分からない。およそこれまで経験のない戸惑いを、単にデビュー前の緊張と片付けていいのか、一夏はもう自分自身が分からなくなりつつあった。
「もー、これってどういう状況だよ……」
 はぁと大きな溜息をひとつ。
 窓の外に視線を流し、縋るように見上げた空、どんよりとした灰色にもう一度。
「なんだかなー……」
 肝心の作家がこんな状態では当然プロットなど出来るはずもなく、出版社と調整する段階にすら至らない。既に八方塞りになり掛けていたところで、またもタイミングよく携帯電話が着信を告げた。
「こんばんは。お疲れさまです」
「あ、ども……」
 相変わらず落ち着いた氷堂の声音。淡々と近況を確認し、雑誌に掲載する細々とした情報を確認してゆく。そんな、自分とは違って何にも乱されない彼の存在が、一夏には少し遠いものに見えた。
「名前は予定どおり "月丘イチカ" にしておきましたから」
「あぁ、うん」
「それから……まだ大筋が固まっていないとは思いますが、作品のタイトルはどうします? 決まったものがなければ仮にしておきますか?」
「ん…。任せる、全部」
「……どうしたんです。元気がありませんね」
 覇気のない声に穏やかな溜息が届く。
 負けず嫌いの作家がまるで萎んだ風船のように打つ手なしとなっている現状に、敏腕編集者は電話の向こうで目を細めていた。
「早速行き詰ってるんでしょう。少し休憩も必要な頃合だと思って、発散の場を設けておきましたから」
「……え?」
 思い掛けない言葉に、一夏は彷徨っていた視線を机上に戻す。
「ふふ。イチカ、パーティはお好きですか」
 聞けば、『seek』の創刊記念パーティが催されるらしい。
 出版関係者は勿論、執筆陣、流通方面、各メディア関連など参加者も多く、ホテルの広間を借りてのそこそこ大きなものになるとのこと。
「それ、俺も出ていいの?」
「勿論です。……まぁ、メインは編集長と主力陣になりますが、あなたも連載を持つわけですし、立派な出席者です」
「そ、そうなんだ……」
 まぁ驚いた。凄いこともあるものだ。
 他所の世界の話を聞くようにふんふんと頷いていた一夏は、だが肝心なことに気が付いた。
「その……作家陣てさ、やっぱ女性ばっかなの?……って、そりゃそうだよな」
 今から身の置き所をなくす一夏に対し、氷堂はその心中を察してクスクス笑う。
「まぁ大半はそうですが……いいニュースがありますよ。『seek』の看板作家は男性です」
「………へ? 男!!?」
 青天の霹靂。同じ苦しみを味わっている人がいるなんて。しかも彼の場合は看板作家というのだから、恐らくキャリアもレベルも桁違いなのだろう。目から鱗が落ちる思いだった。
「悩み事があるなら同じ作家である彼に相談してはいかがかと」
「そっか……うん。そうだな……。そうするよ俺」
「えぇ。きっとためになると思います」
 溺れる者は藁をも掴む。
 だがその藁が、マトモかどうかは別の話───。

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ふと気を抜くといつもどおりのシリアス展開になりそうな今日この頃。
ラブコメと念じながら実は今回も全部書き直しの刑でした。難しいぜ…。

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seek #15 に続く