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 2008年02月 

seek #42 

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 食事後の心地よい余韻に浸るまま、ふたりは連れ立ってホテルのロビーへと赴いた。
 氷堂がルームキーを受け取る間、高い天井の真下にあるソファに身を預ける。控えめに響くピアノの調べ。大輪のカサブランカの香りが鼻孔を擽る中、一夏はゆっくりと目を閉じた。
 少しの緊張と興奮が血液に乗って身体を巡る。自分が自分でなくなるような浮遊感は嫌いではない。
「……これも実体験で書いたらなんて言うかな」
 担当の顔を思い浮かべ、くすりと笑う。
「何を考えているんです」
 閉じていた瞼の裏、光が遮られたのが気配で分かる。長い指が髪を梳くのに気持ちよさそうに首を傾げつつ、一夏は口端を持ち上げて見せた。
「恋人のこととか」
「それは光栄ですね。いい内容だといいんですが」
「何か身に覚えがあるのー?」
「ふふ。まさか。……さぁイチカ、行きましょう」
 頬に滑る掌に頬を寄せ、一夏はそっと目を開く。覆い被さる氷堂の目、そして唇へと視線を這わせ、こくりと咽喉を下げた。
「……もう、そんな物欲しそうな目は、」
 立ち上がった腰をグイと引かれ。
「部屋に入ってからですよ」
 耳元で囁かれ、力を奪われ。心地よい刺激にすべてが溶かされてゆく。
 煌びやかに光が反射するガラス張りのエレベータで一気に20階へと上がり、ルームキーが差し込まれる間中、氷堂は片時もその腰から腕を放そうとしなかった。ベルボーイの案内をやんわりと断り扉を閉めると同時に、首筋にキスの雨が降る。
「……も、氷堂さんてば、ケダモノ」
「男は皆そうですよ」
 身体を反転させ、向き合った唇を強引に塞がれた。
「……んんっ」
「あなたが悪いんですよ、イチカ。あんな目で誘うなんて」
「だって……」
 下唇を甘噛みし、頬を撫で、目尻にキスを贈る。こめかみを通って耳朶に辿り着いた氷堂はそのまま耳に舌を差し入れた。
「ひゃぁ…んっ」
「他の人にしてはいけませんよ」
「……なに、ゆって…」
「あなたの全部は私のものですから。誰にも譲りません」
 そんなのいつ決めたんだよ、という一夏の反論は声になる前に霧散する。大きな手が脈打ち始めた自身をさすったためだ。
「……あ、ぅ…っ」
「私は独占欲が強いんです、観念なさい」
「な、ん……」
 掌で覆われたままくちづけられる。上がり始めた呼吸が上手く繋げないまま、頭の芯が麻痺するのが分かった。
「分かりましたね、イチカ」
 声も出ないまま辛うじて頷くとにっこりと笑みが返される。ようやく安息を得たかと息を整え始めた矢先、だが現実は甘くなかった。
「……あなたに素敵なものをお見せしますよ」
 そう言って促された室内、壁に寄せられたベッドの向こうに取った窓から一面の夜景が広がっている。さすが高層階、見える範囲たるや尋常ではない。更に港に近い立地条件も重なって、その美しさは言葉を奪うのに充分だった。
「う、わぁ…凄い、綺麗……」
「気に入っていただけましたか」
 私からのプレゼントです。
 そう付け加える仕草を普段ならキザだ何だと言い返すのに、この圧倒的な夜景の前では何故か許されない気がした。
 世界を支配した気分になる。すべてがこの手中にあるような気がしてくる。
 背後からするりと差し入れられた右手。いつ抜かれたのかベルトは寛げられ、下ろされたジッパーが既に役目を放棄していた。
「あぁ…っ」
 大きな掌に直に触られただけで自身が急に熱くなる。一瞬にして血が集まるのが分かった。
「ダメですよ、目を閉じちゃ。……ね、目を開けて、イチカ」
「……ん、あ…っ」
「ホラ、窓をご覧なさい。あなたが映っているでしょう」
「…!」
 それはまるで夜に踊る火影。息を殺し頬を染め、快感に喘ぐ己の姿。
 嫌だと声を上げる間もなく追い上げられ、追い立てられ、ベッドの縁に膝を掛けて耐えることしか出来ない。だがそれすらも迫り来る快感の波に煽られるばかりで、もうすぐ決壊することは目に見えていた。
 ガクガクと震える膝。
 俯く顎を捕らえられ、振り向きざまのくちづけを。
「ひ、どぉ…さん……っ」
「ふふ。かわいい声ですね。今夜はゆっくり楽しみましょう」
 言うが早いか一夏自身から手を離した氷堂は、昂ぶりもそのままに敢えてゆっくりとキスを落とした。
「何度でもイかせてあげますよ」
 耳元で、悪魔の囁き。
「最高の快楽を差し上げましょう」
 長い夜が幕を開ける。

「夜を統べるあなたに───」

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週末留守にしたため更新乱れてすみません。ただいまです。
ありがたきコメントへのお返事もこれからさせていただきますね。
さーて、明日からはまたR18@夜景モード、いきますよ〜!

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seek #43 に続く

seek #41 

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 お祝いにと連れて行かれたのは高級ホテルだった。
 落ち着いた佇まいと年季を感じさせる調度品。煌びやかなシャンデリアがマボガニーに映り、磨き抜かれた床に零れている。 まるで別世界と思えるほど日常から切り離された空間にあっても物怖じしない氷堂は、恋人をエスコートしながらレストランへと足を向けた。
「イチカ、アペリティフは何にします?」
「……うーん。俺だけ飲んだら悪いよ。運転あるでしょ?」
「ここまで来て帰すと思いますか?」
 眼鏡越しの目が告げる、今夜は朝まで離さないと。
「……あ、そういうこと……」
 軽く苦笑しつつ、よく冷えたミモザを味わう。喉を滑り落ちるアルコールの心地好さに身を任せながら、一夏は改めて目の前の男に向き直った。
 プライベートで対峙する彼はまさに非の打ち所がなく、女性なら放っておかないだろうと思える。端整な顔立ち、サラリとした髪。それを後ろに撫で付けて、薄い唇が弓形を描く。それはみるみる大きな弧となった。
「どうしたんです、ジッと見たりして。……見とれましたか?」
「………うん」
 誤魔化すでなく、否定するでなく、一夏はこくりと頷いた。仕事で忙しいだろうに何とか遣り繰りをして卒業祝いをしてくれる、氷堂の優しさに少なからず心動かされた。
「だってやっぱこうして見ると、格好いいなぁと思って」
「あなたから言葉で褒められるのは初めてかも知れませんね」
「変、かな……」
「いいえ。嬉しいです……とても」
 そう言って真直ぐに見返してくる眼差しの深さに鼓動が跳ねる。いつまで経っても慣れることなどないだろう、この、ドキドキ。
「……ふふ」
「どうしたの?」
「いえ。初めて会った時はまさか、こんなことになるとは思いませんでしたから」
「あぁ、そうだよねぇ」
 忘れもしない、本来の担当である斉藤が緊急入院し、途方に暮れたあの瞬間。氷堂が通り掛からなければ自分は今もデビューすら出来ていなかったかも知れないのだ。当時の遣り取りを思い出し、ふたりは揃って苦笑を浮かべた。
「てか、思い出した。氷堂さん、あん時俺に『やめとけ』とか言ったよね!」
「そりゃ20歳そこそこの男子学生にBL書けとは言えないですし」
「実際書くことになったじゃん」
「それが相当イレギュラーなんですよ」
「そうなの!?」
「筆力がなければお断りしていました。あなたに会って、その可能性に賭けてみたいと思ったんです」
 それに、と一呼吸置くと、氷堂はグラスの傍らから手を伸ばす。
「……きっと、初めて会った瞬間、あなたに惹かれていたんです」
 そっと指先を重ね、慈しむように手を滑らせた。
「氷堂さん……」
「イチカ、あなたに会えてよかった」
 出会った日の思い出が走馬燈のように過ぎるのに、ただ目を細めることしか出来ない。
「あなたを好きでよかった」
 鼻の奥がツンとなる。掌の中心に甘い疼きが広がってゆく。
「……ありがと。……凄く、嬉しい」
 半分籠もった声は小さかったけれど、恋人の耳にちゃんと届いた。
「俺も、好き、だから」
 気恥ずかしさで真っ赤になったまま俯く一夏に笑みを向け、氷堂はそっと両手を取る。
「かわいい人。愛していますよ」
「〜〜〜〜っ」
 耳まで赤くするのを余所に、空気を整えた氷堂は、運ばれてきた前菜を前に満面の笑みを浮かべた。
「さぁ、いただきましょうか」
「う、うん…」
 ぎこちなくナイフを取り上げた、その時。
「出来たらあなたを先に食べたいところですが……」
「へっ!!?」
 ニヤリと笑う確信犯の笑み。
「期待していただいたところ申し訳ないですが、それは食後のお楽しみということに」
「き、き、期待なんかしてないよっ」
「ふふふ。楽しみですね」
「何がっ」
「フルコースが、ですよ?」
「……あ、そう」
「勿論デザートはイチカ、あなたですから」
「もー、どーして氷堂さんはそうかなー!?」
 言えば言うほど墓穴を掘る。
 かくして、黙々と食事を口に運んでは氷堂に揶揄われ笑われるというメビウスの輪に嵌るばかりで。心の安らぎと身の危険を動じ感じるサバイバルナイトの幕開けだった。

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口説きながら揶揄いまくる、氷堂さんの本性が見え隠れ。
当然この後は据え膳です。というわけで、また近々R指定で……(^-^;)

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seek #42 に続く

message(セリフSS:生徒会) 

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先月1/30、例の生徒会で誕生日ネタを書きまして、
その時は副会長代理である高梨くんのお誕生日ということになってました。
いつか会長も祝ってあげないとと思っていたところ、今日はまさにうってつけ。
2/22は2並びで、通称『ネコの日』なんだそうですよ。
(えぇ、にゃんにゃん……のナニがソレな感じのゴロで……)

相変わらず会長が弄られまくる展開ですが、
よろしければ「続きを読む」からお付き合いくださいませね(^-^)

 

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