seek #35
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深夜に近い時間帯。
エネルギーを使い果たした氷堂は帰宅するなり携帯を手に、そのままベッドに腰を下ろした。
頭が上手く働かない。そろそろ限界が近付いているのかも知れない。ひとつ息を吐くと、見慣れた番号に電波を送る。遅い時間だというのに開いてはツーコールを待たず出てくれた。
「もしもしー」
「イチカ……」
「今帰り? 遅かったね」
「えぇ、今日はとにかくいろいろありました……。あ、初稿見ましたよ。直しは少なそうです」
「ホント? よかったー」
大袈裟に息を吐いてみせる気配にそっと笑う。
「本の表紙はイラスト修正で遅れます。表紙2はどうします? 変えますか?」
「うーん、いいや」
「分かりました。あぁ、そうそう、来月号のコピーや折り込み、少し大人っぽいイメージで入れておきました。氷室が立夏を無理矢理押し倒すシーンが入る回なので」
「……そ、そんなトコまで覚えなくていいです」
一瞬間が開くのは、一夏が恥ずかしさを堪えているせいだ。最近覚えたかわいい癖。
「企画、声は掛かってますがどうします? 原稿優先させますか?」
「うーん、そうだなぁ……」
「それでもいいですよ、調整します」
「うん、ごめん。俺あんまそーいうの得意じゃないからさ」
「えぇ、大丈夫ですよ。それから……」
言葉を続けようとして、ふと。何気ない遣り取りに心が癒されていることを知る。
「……どうしたの? 疲れちゃった?」
黙り込んだ相手を気遣い小さく問う声。自然口元に笑みが浮かび。
「いえ。………幸せだな、と」
「へっ!?」
「本当は仕事の話じゃなくて、ただあなたの声が聞きたかったんです」
「なに、急に……」
「ふふ。イチカは私の栄養剤ですから」
「じゃあ今充電中なんだ?」
「えぇ、もう少し……」
珍しく見せた甘え。
それにくすりと笑う声が甘い疼きとなり、胸にじんわり広がってゆく。
「……困りましたねぇ」
「なにが?」
「声が聞ければ充分だと思っていたんですが……」
どうしても会いたくなりました。
諦め半分で呟いた言葉は、だが幸運にも受け入れられ。
「夜は自転車、寒いからなぁ」
「車で迎えに行きますよ」
「俺ん家散らかってるし……」
「こちらに来てもらえれば嬉しいです」
「……さすが氷堂さん、ああ言えばこう言う」
「あなた好みを目指したつもりですが」
「よっく言うよ!」
そして電話の向こうから軽快な笑い声が聞こえてくる。
「じゃあ15分後に、玄関トコで待ってる」
「分かりました。無理させてしまってすみません」
「平気平気。……それに、同じだから」
「何がです?」
「……俺も、会いたくなっちゃった」
「え…。イチカ?」
今なんて?と問うはずの声は、電話が切れたことによって煙に巻かれた。
恐らくは照れ隠しの下手な恋人が顔を真っ赤にして終話ボタンを押したに違いない。その光景が目に浮かぶだけに、氷堂は液晶を見つめたまま口元に笑みを浮かべた。
「……かわいいひと」
そうして徐に立ち上がると昼間の疲れも何のその、運転席に身を滑らせる。
向かうは一路、愛しい人のもとへ。
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ひとたびくっつくと、今度は離れなくなるっぽいです(大笑)
明日は再びラブラブ、明後日以降はR18ということでひとつ……。
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seek #36 に続く
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