seek #42
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食事後の心地よい余韻に浸るまま、ふたりは連れ立ってホテルのロビーへと赴いた。
氷堂がルームキーを受け取る間、高い天井の真下にあるソファに身を預ける。控えめに響くピアノの調べ。大輪のカサブランカの香りが鼻孔を擽る中、一夏はゆっくりと目を閉じた。
少しの緊張と興奮が血液に乗って身体を巡る。自分が自分でなくなるような浮遊感は嫌いではない。
「……これも実体験で書いたらなんて言うかな」
担当の顔を思い浮かべ、くすりと笑う。
「何を考えているんです」
閉じていた瞼の裏、光が遮られたのが気配で分かる。長い指が髪を梳くのに気持ちよさそうに首を傾げつつ、一夏は口端を持ち上げて見せた。
「恋人のこととか」
「それは光栄ですね。いい内容だといいんですが」
「何か身に覚えがあるのー?」
「ふふ。まさか。……さぁイチカ、行きましょう」
頬に滑る掌に頬を寄せ、一夏はそっと目を開く。覆い被さる氷堂の目、そして唇へと視線を這わせ、こくりと咽喉を下げた。
「……もう、そんな物欲しそうな目は、」
立ち上がった腰をグイと引かれ。
「部屋に入ってからですよ」
耳元で囁かれ、力を奪われ。心地よい刺激にすべてが溶かされてゆく。
煌びやかに光が反射するガラス張りのエレベータで一気に20階へと上がり、ルームキーが差し込まれる間中、氷堂は片時もその腰から腕を放そうとしなかった。ベルボーイの案内をやんわりと断り扉を閉めると同時に、首筋にキスの雨が降る。
「……も、氷堂さんてば、ケダモノ」
「男は皆そうですよ」
身体を反転させ、向き合った唇を強引に塞がれた。
「……んんっ」
「あなたが悪いんですよ、イチカ。あんな目で誘うなんて」
「だって……」
下唇を甘噛みし、頬を撫で、目尻にキスを贈る。こめかみを通って耳朶に辿り着いた氷堂はそのまま耳に舌を差し入れた。
「ひゃぁ…んっ」
「他の人にしてはいけませんよ」
「……なに、ゆって…」
「あなたの全部は私のものですから。誰にも譲りません」
そんなのいつ決めたんだよ、という一夏の反論は声になる前に霧散する。大きな手が脈打ち始めた自身をさすったためだ。
「……あ、ぅ…っ」
「私は独占欲が強いんです、観念なさい」
「な、ん……」
掌で覆われたままくちづけられる。上がり始めた呼吸が上手く繋げないまま、頭の芯が麻痺するのが分かった。
「分かりましたね、イチカ」
声も出ないまま辛うじて頷くとにっこりと笑みが返される。ようやく安息を得たかと息を整え始めた矢先、だが現実は甘くなかった。
「……あなたに素敵なものをお見せしますよ」
そう言って促された室内、壁に寄せられたベッドの向こうに取った窓から一面の夜景が広がっている。さすが高層階、見える範囲たるや尋常ではない。更に港に近い立地条件も重なって、その美しさは言葉を奪うのに充分だった。
「う、わぁ…凄い、綺麗……」
「気に入っていただけましたか」
私からのプレゼントです。
そう付け加える仕草を普段ならキザだ何だと言い返すのに、この圧倒的な夜景の前では何故か許されない気がした。
世界を支配した気分になる。すべてがこの手中にあるような気がしてくる。
背後からするりと差し入れられた右手。いつ抜かれたのかベルトは寛げられ、下ろされたジッパーが既に役目を放棄していた。
「あぁ…っ」
大きな掌に直に触られただけで自身が急に熱くなる。一瞬にして血が集まるのが分かった。
「ダメですよ、目を閉じちゃ。……ね、目を開けて、イチカ」
「……ん、あ…っ」
「ホラ、窓をご覧なさい。あなたが映っているでしょう」
「…!」
それはまるで夜に踊る火影。息を殺し頬を染め、快感に喘ぐ己の姿。
嫌だと声を上げる間もなく追い上げられ、追い立てられ、ベッドの縁に膝を掛けて耐えることしか出来ない。だがそれすらも迫り来る快感の波に煽られるばかりで、もうすぐ決壊することは目に見えていた。
ガクガクと震える膝。
俯く顎を捕らえられ、振り向きざまのくちづけを。
「ひ、どぉ…さん……っ」
「ふふ。かわいい声ですね。今夜はゆっくり楽しみましょう」
言うが早いか一夏自身から手を離した氷堂は、昂ぶりもそのままに敢えてゆっくりとキスを落とした。
「何度でもイかせてあげますよ」
耳元で、悪魔の囁き。
「最高の快楽を差し上げましょう」
長い夜が幕を開ける。
「夜を統べるあなたに───」
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週末留守にしたため更新乱れてすみません。ただいまです。
ありがたきコメントへのお返事もこれからさせていただきますね。
さーて、明日からはまたR18@夜景モード、いきますよ〜!
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seek #43 に続く
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