seek #49
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「いやぁ……ものにも限度はあるよね……」
床一面に積み上げられた段ボール。それを見上げてポツリと呟く。
「それが分かっているならなんでこんなことになってるんですか」
「後悔は先には出来ないからじゃないの?」
まったく……という氷堂の溜息を聞かなかったことにして、一夏はぐるりと部屋を見回した。
気持ちのいい風の吹く日。
春先の湿度を含んだそれが木々を撫で、芽吹く命を日一日と大きくさせる。穏やかで、暖かで、少し眠くなるような快晴の日の午後、ふたりは何故か両手に軍手を填め、薄手のニットにコットンパンツという出で立ちでフローリングに仁王立ちしていた。
急展開に話を進め、手当たり次第丸め込み、気が付いたらまとまっていた結婚話。このあたり氷堂の手腕が存分に発揮されたと言っても過言ではない。そして今、その最後の仕上げとして新居への引っ越し───つまり、一夏が担当宅に押し掛ける形での同棲生活が始まろうとしていた。
だが、その前に立ちはだかる嫁入り道具。一人暮らし時代のアパートにあった荷物を僅か数日で片付けるという暴挙に出ただけあって、運び込まれた量たるや半端ではなかった。
「寝具もキッチン用品もいらないと言ったのに……」
それらを見上げながら担当は大きく溜息を。
「や、そーいうのは全部処分したよ?」
「バス用品やタオル類もですよ」
「勿論。全部揃えたいって言ったの氷堂さんじゃん」
「じゃあこの大荷物には何が入ってるんですか」
「うーん、何だろう……。本、とか?」
「……まぁ作家ですからそこは仕方ないですけど、でも他にもいろいろあるんでしょう?」
「うぅん。俺の着替え2箱だけ。あと全部本だもん」
「…………イチカ」
「はい」
「床が抜けるので半分処分します!」
「ギャー! 何ゆってんの! 絶対ダメー!」
徐に箱に手を掛けた腕をむんずと掴み、許すまじと抱き付く作家に対し、だが与えられたのは優しいキスで。
「わっ」
「……もう、しょうがない人ですねぇ」
宝物なんでしょう、そう言って苦笑するのに胸が鳴る。
「じゃあ収納スペースとして、床から天井までの本棚作りましょうか、壁一面に。その方が作家らしいですしね」
「え、ホントに? 俺ここで書いてもいいの?」
「えぇ。その代わり……」
温かい唇を頬に寄せて。
「いいこにするんですよ?」
ムスクのラストノートを漂わせて。
「……俺は子供かよ」
「ふふ。あなたを甘やかすのも楽しいです」
ゆっくりと近付く唇。
ふるりと伏せられる睫。
迷路に迷い込んだように箱に埋もれた世界でふたり、くすくすと笑みを漏らしながらくちづけを重ねる。さながら悪戯を仕掛ける子供のようでもあり、ささやかな秘密を共有するパートナーとして。
「ねぇ、イチカ。ちょっと休憩しましょうか」
向けられるは確信犯の満面の笑み。
「氷堂さんてば魂胆見え見え。……って、ちょ、待っ……ん、んーっ」
奪われた吐息の熱に身を震わせて。
「イチカ……愛してますよ」
「……もー、バカ」
手を伸ばせば極上のハニースィート。
さぁ蜜月は始まったばかり。
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押し掛け女房万歳!(・∀・) 愛の巣愛の巣。いそいそイチャイチャ。
明日は連載が丁度#50でキリがいい上、リアルで一夏の誕生日。
Wでお祝いしながらも実は最終話です。最後までよろしくです〜(>_<)
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seek #50 に続く
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