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 2008年03月 

noir #06 

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 神の絶対領域を犯す者に哀れみを───。

 予想だにしていなかった話に立夏はしばし冷静さを失った。
 無理もない。自分の出生が本当だとしたら、生まれた時は女の子で、父親の意志によって男にされ、更にはその機械を作ったのは氷室だという。すべて極近しい人間の間で行われてきたこと。仕組まれた現実。
 言葉を失っている相手に対し、時丘は目を細めた。
「混乱してますよね。……全部受け止めなくてもいいんですよ」
「いや、失礼」
 慮るような口ぶりに、却ってハッとさせられる。動揺を押し込めるスキルは授けられていた。
「続きがあるのなら話してください」
「……分かりました」
 覚悟を感じ取ったのだろう、訪問者は顎を引く。大きく呼吸を整えると「落ち着いて聞いてくださいね」と前置きして再び口を開いた。
「GSMは人類が創り出した究極の装置のひとつと考えられています。神が与えた性を人間の手で入れ替えるものと。でも、だからこそ───どうしても避けられないリスクがあった」
「リスク……?」
「人間の手では、どうしても越えられない壁があったんです」
 緩やかな風が吹く。湿った空気が鼻孔を掠めた。
「GSMはただの生殖機能を入れ替えるだけの装置ではありません。性を成り立たせている身体の細胞から脳構造に至るまでのすべてを作り替えるものです」
「そんな、こと……」
 出来るわけない。そう続けるはずの声は闇に吸い込まれ消えた。向けられた視線の真剣さがこれは事実なのだと語っていた。
「脳を作り替えるということは即ち、すべてをデリートするということ。これまでの記憶も、経験も、脳に溜めていた情報はすべてクリアされます」
 まるでコンピュータのリストアを語るように、抑揚のない声が淡々と語る。あまりに現実感のない話に我が身に置き換えて考えることが出来ない分、立夏はそれを黙々と処理することに努めた。
「それは、いつ……?」
「立夏さんが生後3ヶ月の頃だったと聞いてます」
 つまり、自分が生まれながらに持ち合わせていると思っていたのは植え付けられた記憶なのだと。
 闇を凝視する。答えも未来も、見えなかった。

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「仕組まれた」という言葉に妙に心ときめく周期があります(何だそれ)
ちなみにこれが科学分野かというご指摘は心の中でお願いします(>_<)

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noir #07 に続く