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 2008年04月 

noir #22 

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 ぬくもりがこんなにも我を忘れさせるなんて知らなかった。

 気が付くと、ベッドの上で唇を重ねていた。
 冷たいシーツに触れた背中がヒヤリとしたのは一瞬のことで、それすらも浸透する熱が覆い尽くしてゆく。波打つ白いシルクはどこまでも続く海原のようで、ふたりの息遣いだけが波間を泳いだ。
 繰り返し、繰り返し。
 確かめるように、貪るように。
 ひたすらに唇を合わせ、舌を絡ませ、蜜のような唾液をねだる。滑らかな首筋を這う指先が月光に白く浮かんだ。
「立夏様…」
 名を呼ぶ優しい響きに、立夏はふと泣きたくなる。彼がどれだけ自分を想ってくれているのか、気持ちのすべてがそこに凝縮されているのが分かった。
「───夢のようです。あなたに触れることが出来るなんて」
 喜びに眉を寄せ、執事は真直ぐに目を覗き込む。
「夢のようです。あなたを愛することが許されるなんて」
「あぁ」
「そしてあなたに……愛されるなんて……」
 堪らず立夏は両手を伸ばした。
「夢じゃないよ」
 ひむろ、と小さく呼ぶ声が合図。
「立夏様……っ」
 きつく抱き合い、存在のすべてを確かめる。互いの温度も、鼓動も、何もかもひとつになってしまえばいいのにと思った。
「立夏様……あなたの全部を、私にください……」
「……ひ、むろ…」
「あなたの心も、身体も……魂も……」
 核心に近付く唇。赤裸々な欲望を暴き出す。
「っぁ、あ…、は……っ」
 はだけるボタン。露わになる肌が導いてゆく。
「あなたの全部で私を感じて、私で一杯になってください」
「……あ、ちょ……、ん……っ」
 するりと肌を撫で上げた掌に竦む肩。
「……は、ぁ…っ」
 ビクン、と撓る背を抱き締め、弧を描いた顎先にくちづけを。身悶えする敏感な身体に舌を這わせ、恍惚の表情に酔った。
「……ひむ、ろ……っ」
 未踏の感覚に身を竦ませる立夏。
「立夏様……」
 燻っていた火種を煽られる氷室。

「あなたが欲しい───」

 項に頬を擦り寄せ、所有の証を刻み付ける。
 真っ赤に咲いた花びらが今宵の情事を彩っていた。

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noir #23 に続く