sign #14
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変化は徐々に、だが確実に訪れていた。
屋外での撮影がよほど楽しかったのか、コウはたびたびそのことを話す。シャッターを切る側としてもモデルにそう言われて嬉しくないはずもなく、それ以来ふたりは休みを合わせて時間を共有するようになっていた。
専ら喋るのはコウの専売特許で渉はピントを合わせるのに大忙しという、実にふたりらしい立ち位置。それが最も自然で、自分を晒らけ出せる方法なのだと本能で知っていた。
「……随分写真が溜まったよ」
久しぶりの ships のカウンター。
チビチビとロックに口を付けながらカメラマンが笑みを浮かべる。
「そーよねぇ。もう何回? 2回……3回だったかな、撮りに行ったもんね」
「全部最初から見直すとコウの表情が随分変わったのが分かるよ。今度ここで上映会でもしようか」
「な…っ」
「お、いいねー」
「カジー!」
いつの間に表れたのか、厨房から顔を覗かせたオーナーは、「お待たせ」と一言添えて渉の前に皿を並べた。
「そんなこともあろうかと、ウチの壁、白いからな」
「……どーいう意味よ」
「プロジェクターで拡大映写が出来るだろ。おまえの面白い顔がアップになるぞ」
「ジョーダンじゃないわよっ なんのイジメっ」
ギャーギャーやり始めたコウを前に、渉は肩を振るわせて笑いを堪える。最近少しずつ話すようになったオーナーの梶原は、どうやらコウにとってはいい意味での天敵らしい。
「渉、それデータでちょうだい。ぜぇぇったいにカジーには見せないでね」
「ハハ、照れ屋だな、コウは」
はいはいと頷くのを余所に、なぜか言葉に詰まったオーナーが再び厨房に消える。その背中を「カジーは爽やか路線に弱いからなぁ」というコウの呟きが追い掛けた。
「……それよりさ、」
「うん?」
ズイ、と身を乗り出したバーテンダーは口やかましい相方がいなくなったのをいいことにリキュールに手を伸ばしつつ、悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「渉の次の休み、いつ? どっか行こうよ」
「その口ぶりは、行きたいところでもあるのかい?」
「ん」
極上の、とはこういう表情を差すのだろう。満面の笑みを浮かべたコウは目を輝かせて告げた。
「遊園地♪」
「……男ふたりで?」
「そ。男ふたりで」
にこにこと笑みを絶やさぬ相手を前に、カメラマンは分析が遅れそうな脳を必死で追い立てる。若者ならまだしもこの妙齢、足を踏み入れていいものなのか……。
「いいじゃん、難しく考えなくたって。いるだけで楽しいし」
迷いなど端からお見通しとでもいうようにコウは右手をヒラヒラと振る。
「それに、なんていうのかしら……要はパーッとね、遊びたいのよ」
「……コウ、ストレスでも溜まってる?」
「ふふ、心配性してくれてありがと。でも違うわよ、アタシが発散したいだけ♪」
ジェットコースターは3回は乗るでしょお、それからバイキングと、あとあれ何だっけ、フリーフォール? あの一気に落ちるのがクセになるのよぉ。それからねー……。
指折り数え出す子供のような横顔を見ているうち、細かいことなどどうでもよくなるのが自分でも分かった。
「分かった。行こう」
「ホント? やったー!」
「はしゃぎ過ぎてダウンしないようにするんだよ?」
「ハーイ」
右手をピシ、と掲げて敬礼の真似などしつつ、俄にテンションの上がったらしいバーテンダーは早速アルコールの量を間違える。妙に濃い出来のラムコークを奢ってもらったりなどしつつ、頬が緩むのを自覚する渉だった。
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コウは絶叫系大好きだと思うんだ。渉は真逆に超苦手とかだといい(笑)
次回はいよいよイロモノ系「妙齢の男ふたりのデート編@遊園地」ですよ……。
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sign #15 に続く
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