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 2008年05月 

sign #32(完結) 

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 ふんわりとした空気。
 他愛もない話をしながら笑い合えることが、こんなに幸せな気持ちになるなんて知らなかった。テーブルに向かい合い、遅めのブランチを摂りながら、渉はしみじみと恋人を見遣る。
 骨格や喉仏は間違いなく男性であるのに、顔立や仕草やが中性的なコウ。
 よく笑い、よく食べ、よく喋る。凡そ自分とは正反対の彼のやることなすこと、いちいちに笑みが零れてしまうのはきっと恋の魔法に掛かったせいだ。或いは病とも言うべきか、そんな相方の眼差しに気付いたのか綺麗なウィンクを送って寄越すのにさえ、トキめいたりして。
 ……あぁ、これが病気と言わずして何と言う。お医者様でも草津の湯でもとはよく言ったものだ、とよく分からない解釈をして、取りあえずコーヒーを流し込む。胸が一杯でこれ以上食べられないと言ったら、彼の人はまた盛大に笑うんだろうけれど。
「あ、そうだ」
 思考迷路に嵌った渉を現実に引き戻す声。
「渉、今日仕事は?」
「……あ、あぁ。忘れてた」
 あっさり白状すると、一拍置いて笑い声が返される。
「ちょっと、どんだけ色ボケしてんのー」
「本当だ……困ったな。撮れるかな」
「プロだもん。渉なら大丈夫」
「ふふ。嬉しいことを言ってくれるね」
 引っぱり出した手帳を捲ると、夕方から仕事が入っている。フリーのカメラマンに時間制約がないのは好都合だが、これでは今夜は遅くまで掛かるだろう。
「そっか……。じゃあ次に会えるのは、またお店に来てもらうか、連絡取り合うかだねー」
 もっと一緒にいたかったのにと告げる眼差しの先を読み、渉はにっこり微笑んで見せた。擦れ違いを防止するための奥の手がここにある。
「これを、受け取ってくれないか」
 差し出したのはスペアキー。言うまでもなく、この部屋の。
「……入り浸っちゃうかもよ?」
「そうしてくれると嬉しい」
 照れ隠しの冗談は、だが真剣な眼差しによって遮られた。
「渉…?」
「僕は仕事の時間が不規則だし、君は夜にいない。僕達が少しでも一緒にいられる方法が他に思い付かなかった」
 だから、と言葉を続けながら、テーブル越しにそっと手を取る。
「幸助さえよければ、一緒に住まないか」
 案の定絶句した恋人は何かを秤に掛けているのか、それともただ面食らっているのかしばし逡巡した後、思い通りの結論に達した。
「……それ、プロポーズじゃない」
「そのつもりだよ」
 キュ、と握り返す指先。
「渉…」
「なぁに」
 だからゆっくり席を立って。見つめ合った目を反らさずに。
「大好き!」
「うん、僕もだ」
 そのまま永久のくちづけを。
 この気持ちが変わらず続きますように。

 新しい日々が始まろうとしていた───。

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終わったー! まずはどちら様もお疲れ様でございました。感謝!v(^-^)v
明日はいつもの長ーいあとがきと、次話の告知予定です。覗いてくださいね。

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