seasons #01
風香る5月───。
五月晴れとはよく言ったもので、つい先日まで花見に興じていたことなど忘れてしまったかのように大型連休に合わせ人々は一斉に初夏の顔をする。街路樹達も若葉を揺らし、来るべき梅雨を前に束の間の日差しを謳歌していた。
アスファルトを闊歩するサラリーマンの群れは、そんなことなどお構いなしに俯き加減で通り過ぎたが、ここにもひとり、立ち止まって晴れ渡る空を見上げる者がいた。
青年の名を、大野巧矢(おおの たくや)という。
181cmの長身、恵まれた体躯は高校時代の部活で鍛えた賜で、大学生となった今でもなんとか身体を維持しているのには訳がある。
実家からの仕送りを極力断ち、アルバイトで生計を立てようと運送業者のユニフォームを身に纏うようになったことが幸いし、ある意味部活以上の重労働に汗を流す日々。炎天下だろうと吹雪だろうと強いられる仕事のお陰で肌は小麦色に焼け、色素の薄い猫毛はより一層茶色味を増す。歯だけがくっきりと白く浮かぶ様はどこから見ても好青年そのものだった。
事実、人懐っこい性格の巧矢は年上年下を問わず慕われる。リーダーではないけれど、輪の中心のような、賑やかな人柄。それは友達の間だけでなく、バイト先でも健在である。
「おー、巧矢ー」
担当ドライバー達が集まる事務所、通称 "詰め所" のドアを開けるなり耳馴染みの声が飛んでくる。行儀悪くパイプ椅子を半分後ろに倒しながらユラユラと腰掛けるその人は、コンビを組んで1年半になる先輩の一条隆志(いちじょう たかし)だった。
「一条さん、はよーッス」
「はよーじゃねぇよ。遅いわ」
「えー、まだあと3分あるでショ?」
それをギリギリっつーんだよ、というツッコミを笑顔で軽く受け流しつつ、巧矢は出勤カードをタイムレコーダーに差し込む。旧式のそれは、よくドライバーの一方的都合で時間を歪められては社長にお目玉を食らうシロモノ。
「それよりさ、ニュースニュース」
嬉しそうに居住まいを正す一条に手招きされるまま近くの椅子に腰掛けると、悪戯っ子のような目で告げられる。
「新宿区の、東エリア担当が辞めたらしーぜ。んで、俺ら西担当が交代だってさ」
「マジスか〜。ようやく西分かってきたトコだったのに、今度は東?」
「まーまー、いいじゃねぇの」
内容とは裏腹に、一条はやけに楽し気な表情を浮かべる。───そう、バイトの入れ替わりなど日常茶飯事。彼が言わんとしていることはそこじゃない。伊達に付き合いが長いとオートフォーカスでピントが合うのだ。
「……あー…。東って歌舞伎町とかも入ってんスよねぇ?」
「へへ。あのへんいろいろヤバそうだよなー。おまえ行けよー?」
「ちょっと一条サン、そりゃないっしょー!」
ケラケラと笑いながら小突き合っていられたのも現場に着くまで。
手早く身支度を調え、新しい仕向先という花屋に足を踏み入れた瞬間、まるで嵐のように恋に落ちた。
一言で言うなら晴天の霹靂───運命の相手は高嶺の花。
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始まりました新シリーズ。ワンコ×関西弁、よろしくです!
まずはワンコとその先輩紹介ということで、お姫様は明日ご登場〜。
こんなところでなんですが、昨日はあらすじだけだったにも関わらず、
アップ直後に物凄いアクセスいただきましてありがとうございました。
新シリーズも頑張りますよ〜〜!
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seasons #02 に続く
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