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 2008年05月 

seasons #02 

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 青天の霹靂とは、こういうことを言うのだ───。

「───!!!」
 こぢんまりとした花屋の店先、ふたりを出迎えた店主を前にするなり、巧矢の背筋に電流が走った。一気に全身の血が沸騰する。頭の上でファンファーレなんかも鳴ったかも知れない。とにかく、心の中は盆と正月が一緒に来たような大騒ぎ、心臓は長距離ランナー並にバクバクし、頭が真っ白になっていた。
「どーも、アスカ運輸の一条です。今度からこちら担当さしてもらいますんで」
 そんな後輩の一大事などお構いなしに、一条はあくまでビジネスライクな挨拶に勤しんでいる。「今までは駅のあっち側担当だったんですけどねー、こっちは初めてなんですよ」なんて、どうでもいい自己紹介まで織り込みながら言葉を続けている向かい側。
「……あぁ、どうも」
 初対面の人間にしてはやたらと無情な返事が返ってきたりしたが、元々そんなことは気にしない一条と、今はそれどころではない巧矢相手だったため爽やかにスルー。
「友坂です」
 そう言って受け取った名刺をまずは家宝にすることに決めた。
 seasons 店長の肩書きの下、友坂安曇(ともさか あずみ)と印刷された名前を何度も目でなぞる。ついでに心の中で「安曇さん」などと名前呼びしてみたりして、その甘い響きにそこらを転げ回りたい衝動に駆られたりした。大忙しである。
 そんな風に激しく我を忘れながらも、巧矢は同時進行でデータ収集に乗り出していた。
 一条と話す彼は数歩離れた位置からでも旋毛を見下ろすほどなので、身長は恐らく170cmそこそこといったぐらいだろう。黒いシャツの袖口からヒョロリと伸びた長い腕、細い身体のラインが繊細な印象を醸している。これまで余程日差しを避けて暮らしてきたのか色が白く、艶やかなサラサラの黒髪には天使の輪が光っていた。
 一見すると薄幸の美青年を思わせる風貌にも関わらず、彼に弱々しい印象がないのはこちらを見上げる瞳の力。三白眼の迫力は動物の威嚇を思わせる。後には単に視力が悪いための藪睨みだったことが分かるのだが、この時の巧矢にそれを推し量る余裕はない。分かることといえば、この無愛想でぶっきらぼうな店長の一挙手一投足に胸がトキメくということだけ。平和である。
 ───斯くして、一目で心奪われた後輩がまったくの使い物にならない間、一通り話をまとめた一条によって撤収され、車が走り出してようやく、巧矢はハッと我に返った。
「……あれ、帰ってる?」
「おまえなー、どこまでワープしてんだよ。ちゃんと仕事しろ仕事」
 俺が全部まとめたじゃねぇか、とあくまで仕事は後輩に押し付けるスタンスを主張する先輩の言い分も今日だけは耳に入らない。ゆえに、会話は言葉のキャッチボールでなく、一方通行の剛速球と成り果てた。
「ねぇ、ちょっと、一条さん、あの人綺麗過ぎじゃないスか!?」
「はァ!? 人の話を聞けコラ」
「ヤバイっスよ。ねぇ、あれ犯罪スよ!」
「おまえの頭の方が犯罪だ、この変態」
 信号で止まったことをこれ幸いと、一条は後輩の頭を揺さ振ってみるのだけれど、そんなことで復旧するほど切れたパイプは細くなかった。
「あー、どうしよう俺、仕事が超楽しみ過ぎる。生きててよかったッス……!」
「そうかそうか、そりゃよかったよ。いいからとっとと正気に戻れ?」
「バイト万歳ー!!」
「うっとーしー!!」
 血管が切れそうな絶叫が見事にハモる。
 こうして波乱の日々が幕を開けた。

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はいはいー、安曇ちゃんのご登場〜。あんまり喋らない人ですけど(^-^;)
早くもワンコが変態化です。こういうのが書きたかったの……!(笑)

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seasons #03 に続く