seasons #04
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運命共同体とさえ思っていた一条があっさりと東エリアを離れてからというもの、巧矢はカーナビだけを相棒に日々新宿を駆けずり回っていた。なせばなるとはいったもので、何とかこなしてしまっているあたりが先輩の呪いのようで腑に落ちないものの、初めの何日かに比べればだいぶ早く上がれるようにもなってきた。
その日も終業予定より40分前にノルマを片付け、ヤレヤレと思った頃───ふと印象深い街並みに気付く。例の花屋の傍であると脳が認識するより早く、脊髄反射的素早さで巧矢は車を路肩に寄せ、seasons へと駆け寄った。
初夏を迎えようとしている季節柄、店頭には色とりどりのカーネーションが咲き誇る。
花の知識は幼稚園児と同レベル、などとは決して胸を張って言えるセリフではないのだけれど、悲しいかな、巧矢に分かるのは桜、向日葵、チューリップが関の山。だから当然、赤以外のカーネーションについては物珍し気に見下ろすばかりで、一見それと分からないような変わった品種相手では、きょとんと首を傾げるしかない。
そうしてボーッと立ち尽くす巧矢は、唐突に現実に引き戻された。
「……あんた」
「へっ!?」
呼び止められると思っていなかっただけに、見事に声が裏返る。だが、目を上げた先、意中の相手がこちらを見ていることで更に心臓まで止まり掛けた。
「この間の配送の人?」
「あ、は、はい。どうも……」
咄嗟に満面の笑みを浮かべたものの。
「あんな。そこ突っ立ってると邪魔なんやけど」
無惨にもバッサリと切って捨てられる。だが、キツイ一言でめげていては業者は勤まらないのだ、とは一条談。
「すいません。お花綺麗だなーって思って、つい……」
「花……好きなん?」
ふと。
纏う雰囲気が柔らかくなったのが手に取るように分かった。
「はい。俺あんま種類とかよく分かんないんスけど、綺麗でイイですよね。これ、さっき見て珍しいなって思って……カーネーションなんスか?」
瑞々しい若葉を思わせるようなペールグリーンの一団を指すと、彼はホンの少し、緩く笑った。
「あぁ、"レディ・グリーン" な」
「へぇ。俺、母の日には赤いの贈るんだと思ってました」
「最近はいろいろあって、グリーンに限らずよう出るよ。……ま、元々母の日のカーネーションは白やけど、イメージもあるからな」
「へー。じゃあ、店長さんは白いお花を贈るんスか?」
「…………」
何気ない会話。悪くない流れ。そう、思っていた。
急に黙り込んだ相手にゆっくり小首を傾げると、返されたのは静かな声。
「贈りたくても、もうおれへんから……」
途端、ヤバイ、と心が警鐘を鳴らす。本能が不可侵領域にキュッとなる。
「俺、両親ともおらんねん」
そうして淡々と続ける。アメリカの少女が母親の棺に白いカーネーションを手向けたことが母の日のルーツなのだと。
「あ、あの……無神経なこと聞いてすいませんでした!」
「えぇよ、気にせんといて」
すい、と目を細めてみせるのがどこか寂しそうで、儚げで、居ても立っても居られない巧矢は何度も頭を下げるばかり。しまった、という思いと、このままヨソヨソしくなりたくない、という願いで頭が一杯になってゆく。
何か話さなければと躍起になっていたその時、ひとつの名案が閃いた。
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もう母の日過ぎましたけど、そのへんは大目に見てやってください(^-^;)
それより、ようやっと安曇ちゃんが喋らはりました。へへ。
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seasons #05 に続く
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