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 2008年05月 

seasons #13 

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 約束の時間までの正味1日半を一日千秋の思いで待ち焦がれる者があった。誰あろう、既に変態の呼び声高い巧矢である。
「なんてったってオフの安曇さんですからねー、これはもう、いろいろ制約が外れててフルオープンってことでしょー?」
 ふんふんと鼻歌を歌いながら店に向かう足取りも軽い。大学の講義中はこの後のイメージトレーニングに明け暮れたせいか、何ひとつ覚えちゃいないが気にするな。俺は恋に生きるのさ、なんてね。なんてねー!
「それに人気のないバックヤードだし……」
 そこまで言ってハッとする。
「てことは密室じゃん!? 密室でふたりっきりじゃん!? うわぁヤバイ! なんつーか、いろいろはみ出ちゃうかもしんないー!」
 これを一条が聞こうもんなら刺し違えてでも止めただろうが、残念ながらストッパーはいない。意気揚々と店の裏手に回った巧矢は大きく深呼吸を繰り返し、目眩く世界に頬を染めつつ一歩足を踏み入れた先───そこに広がっていたのは恋のステージという名のお花畑ではなく、当然のようにカオスと化した倉庫だった。
「……改めて見ると結構凄い……」
 突き付けられた現実から思わず目を反らす。これでひとりだったら半泣きだ。
「よぉ、悪ィな」
「安曇さん!」
 背後からの声にビクンと肩を竦ませつつ振り返ると、そこには腕捲りをし、更に軍手を嵌めて戦闘態勢充分の店主が立っていた。
「うわー、相変わらず綺麗ッスねー」
「……は?」
 どこを見たらそんな単語が出てくるのかというツッコミはノーサンキュウで一気にテンションが上がる巧矢など何のその、クールを素でいく安曇に恐いものはない。
「ほんなら、早速始めよか。……こっから向こうの荷物、しばらく出さんでいいモンばっかやから、一番奥入れるようにするわ。ほんで、あの棚のちっさい箱は中身まとめて畳んでしまって……。あ、畳んだら紐で括ってな、ほかす時楽やから。それ出来たらこっちの棚動かして、終わり」
 脳内でシミュレーションを重ねた結果なのだろう、次々と的確な指示を飛ばす横顔は司令塔さながらである。
「取りあえず、ここらの段ボール、奥入れてくれるか」
 にっこりと満面の笑みなど浮かべてみせるから、それだけで半分魂が飛んでいった巧矢だったが、それがすぐに半端ない頼みだったと合点がいった。要は激重いのだ。
「あ、安曇しゃん……」
「ん?」
 なぁに?とばかり小首を傾げる姿に骨抜き。更には、
「任したで、巧矢」
「は、ははははいっ! お任せくだサイッ!」
 彼の口から名を呼ばれた、ただそれだけのことでエネルギーが漲るのだから現金なもの。けれど春爛漫の脳は恋の病に侵されているのだ、理屈で考える方が間違っている。なんて、強引なまとめで巧矢は袖を大きく捲り。
「よっこら、せっ」
 威勢のいい掛け声と共に段ボール箱を担ぎ上げる。
「おーやるなぁ。よぉ持てるな」
「へへ。安曇さんのためッスから!」
「巧矢来てくれてほんま助かったわ」
「ホントですか? 俺、役に立ってる?」
「立ってる立ってる。その荷物全部運んでくれたらもっとな」
 鬼のような発言も笑顔という名のラッピングでこうもすんなり渡るのだから。
「リョーカイ! 頑張りマス!」
 重い箱を2個積みにしてみたりなんかして。
 いいのいいの、幸せだからそれで。

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少しずつ大型犬の扱い方が分かってきたらしい安曇ちゃん……(笑)
言ってることは鬼以外の何者でもないんですけどねー。ホホホ。

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seasons #14 に続く