seasons #15
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大騒ぎしながら片付けを終えたふたりは、遅い夕食を取るべく街へと足を向けていた。
並んで歩きながら、安曇は改めて傍らの青年を振り仰ぐ。自分より10cmは高いだろう長身は長閑に鼻歌など歌いながら実に平和そうだ。それに引き替え───つい今し方の痴態を思い出し、ひとり舌打ちする。
何が嬉しゅうて男にお姫様だっこされなあかんねん。
思い出すだに恥ずかしくて顔から火が出そうになる。その上あんなに軽々と持ち上げられては、男としてのプライドにだって関わるのだ。まぁ、重けりゃえぇってモンでもないけど、と心の中の独り言ながらツッコミを入れつつ、考えを揉み消すように頭を振る。
「安曇さん……?」
不思議そうに見下ろす相手に表情を取り繕うこともせず、安曇は唇を引き結んだ。
「巧矢、何食いたい? 手伝ってもろたし、奢るわ」
「マジすか!? うわ、嬉しいな〜」
ホントは安曇さんの手料理が食べたいんですけど、などという煩悩から漏れ出したとしか思えない続きは取り敢えず聞かなかったことにして。
「あんま高いんはあかんで。払える店にしといてや」
「やだなー、そんなトコ俺の方が入りたくないッスよ」
へへ、と笑ってみせる、その仕草に何かモヤモヤしていた気も解れてゆく。やっぱこいつといると楽なんだな、と思い至り、安曇は笑みを返した。それが滅多にないことなど自覚するまでもなく。
「それにしても、この時間って飲み屋ばっかッスね」
「え? あー、そうかもな。いうてもファーストフードは行きたないし……」
どうしたものかと思い倦ねていたふたりが立ち止まったのは松屋の前。
「……ここでえぇ?」
「えーと、ジャンクフードよりは幾分マトモですけど、安曇さんこそいいんスか?」
だよなぁ、とお互い頷きつつ、だが明確な打開策が見つからないまま思案に暮れる。
「俺は居酒屋でもいいんスけど……。あ、そか。飲むとなんだかんだで高くなっちゃうもんね」
「アホ。学生は大人しく奢られとけ」
「なら居酒屋行きましょうよー。俺、安曇さんと飲みに行きたいー」
「また今度な」
「なんでッスか。お酒嫌い?」
「いや……」
ひょい、と下から覗き込まれ、思わず強引に顔を逸らす。酔うと笑い上戸になるだなんて言えない。ましてや目の前でそんな痴態など晒せるわけがない。
「ま、まぁ、今日は松屋で勘弁しといて」
「はーい。じゃあまた今度」
「今度な」
「はい、今度」
妙に力が入った念押しだったのはこの際忘れることにして。
実に色気のない店内に男ふたり、並んでカツカツと丼物を掻き込みながら、ふと我に返ると不思議な絵面だなと思う。ついこの間までは見ず知らずの仲、単に仕事を通して関わりがあっただけなのに、こんな風に休みの日に一緒に夕飯を食べるなんて想像もしていなかった。
人付き合いが得意ではない自分が、こいつの前では不思議と自然体でいられる。緊張するでもなく、気負うでもなく、ありのままの自分でいられる。そんな相手がいることがこそばゆくて器で顔を隠すようにして安曇はそっと笑った。
「……あ、おまえ付いてんで」
まるでお約束のように頬に米粒を付けているのを取ってやりながら、本当に犬みたいだなと苦笑。
「やーん。安曇さんたらー」
「なんやねん。クネんな」
「へへ。ありがとございます」
穏やかな休日が終わろうとしていた。
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初デートで松屋ってもう、どんだけ色気ないのこの人達ー!(笑)
そのうち笑い上戸の安曇ちゃんも登場させたいなと目論んでおりますよー。
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seasons #16 に続く
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