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 2008年06月 

seasons #18 

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 翌日───。
 あんな夢の後じゃちょっと照れるよなぁ。でもホントに正夢だったら今日あたり山場じゃね? どうしよう、俺今日勝負パンツじゃない!───などと、頭のワいた浮かれポンチがひとり勝手に盛り上がりを見せる中、だが配達の途中で寄った店先はシンと静まり返っていた。
「あれ…?」
 定休日でもないのにシャッターは閉まっており、臨時休業を知らせるような貼り紙もない。本来なら綺麗にまとめられたディスプレイの奥、やや無愛想な表情を浮かべた店主が「あぁ」とか「おー」とかぞんざいな挨拶で迎えてくれるはずなのに。
「……まさか、来られないことがあるんじゃないよな」
 それは虫の知らせだったのかも知れない。
 ポケットから携帯を取り出し、先日教えてもらったばかりの電話番号をメモリから呼び出す。そうでありませんように、との僅かな願いは、けれど幾度かのコールの後出てくれた声によって裏打ちされた。
「……どうした、珍しな」
「安曇さんこそ声掠れてる。具合悪いんスね」
「や、そうでも……」
「嘘。辛そうだもん。俺に嘘吐かないでよ」
 かつてない強気な口調に電話の向こうの躊躇いが聞こえる。ややあって、諦めたように「この頃忙しかったからな」という言い訳にも似た言葉が漏れ、過労であることを知った。
「今すぐ行きます!」
「来んでえぇって……うつるから」
「ちょっと待っててください」
 静止の声など聞こえなかった。とにかくひとりにしてはおけなかった。
 だが、今は配達の途中。トラックに残った荷物だけはとにかく何とかしなくてはいけない。選択を迫られた巧矢は大きくひとつ深呼吸をすると、掛け直す旨を伝えて一度電話を切る。そして矢継ぎ早に掛けた相手は仕事仲間の谷野だった。
 頼む、出てくれ……祈りにも近い思いは届いたか、幸運にもワンコールで相手が出る。もしもし、との声さえ遮る勢いで巧矢は携帯に齧り付いた。
「もしもし谷野さん、超お願いがありますっ」
「わ。どした、切羽詰まった声して」
「俺、今すぐ行かなきゃなんないトコがあって、でも荷物が全然終わってなくて、谷野さん、今どこスかっ」
「……おまえ、喋る順番が全部逆じゃん」
 くすくす笑いながら位置を確認した谷野は、割合近くにいると教えてくれた。
「すいませんっ。あと30分後に合流で、引き継いでもらえます?」
「はいはい。事情は後でしっかり聞かせてもらうかんな」
「ありがとうございます恩に着ます言うこと何でも聞きますから!」
 米搗きバッタのように見えない相手に向かって拝み倒すと、再びリダイヤルで安曇に繋ぐ。
「安曇さん、あと1時間以内にそっち行きますから。それまで頑張ってください」
「も……えぇのに。また無茶したんとちゃうの」
「安曇さんに何かあってからじゃ遅いんです。こんな時ぐらい、俺を頼ってください」
 真摯な声。こんな音が出せるなんて自分でも知らなかった。それほどに真剣で、必死で、思いばかりが募っていた。
 それが伝わったのだろう、強情な相手が柔らかな承諾の溜息を吐く。
「……分かった」
 それを機に、取り急ぎ近辺の届け物を捌きまくり、合流した谷野に平身低頭バトンタッチして、大急ぎで詰め所に戻って早退手続き。そして。
「もしもし、安曇さん」
「うんー?」
「なんか、欲しいものとかないスか?」
「特に……あぁ、お茶買ってきて」
 肩で電話を挟みながら着替えをし、ダッシュで駅に向かう途中。気が付いた、とても、大事なことに。
「ところで、あのー……家、どこでしたっけ?」
 喩えて言うなら弾丸のように飛び出したはいいものの、どっちに向かって走ればいいのか分からなくなっている大型犬。道路の真ん中で右往左往している巧矢に対し、届いたのは安曇の爆笑だった。
「あっはっは! ホンマにアホやなー。どこ行くつもりやったん」
「す、すいません〜〜〜」
 またも見えない相手に頭を下げつつ、教わったマンションの場所を刻み込む。最寄り駅までの途すがら車窓から夕陽を眺めつつ、少しでも回復していて欲しいと、それだけを願った。

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南の島から戻りました! 更新があいてしまってすみません〜。
これからまた毎日煩悩全開でいきますので、お付き合いくださいね(^-^)

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seasons #19 に続く