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 2008年06月 

seasons #23 

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 気付いた時には抱き締めていた。
 腕の中、温かい身体。一回り小さな肩幅を掻き抱くように引き寄せる。優しくしてあげたいのに、安心させてあげたいのに、逸る心が何ひとつ自由にさせてくれない。煽られた衝動で理性は焼き切れ、今はただ目の前の愛しい人しか見えなかった。
「安曇さん……もう俺、止まれないから」
 だからどうか拒まないで。そして冗談で済ませないでね。
 確かめるように頬に手を滑らせ、上向かせる。伏せられていた瞼がゆっくりと持ち上がり視線が絡む。そこに自分と同じ情欲の色を認め、思わず胸がキュッとなった。
「好きです」
 添える掌を耳元へ。そのまま髪を梳くようにして距離を縮める。蝶の羽根のようにふるりと震えた睫が静かに閉じられていくのを夢見心地で見守った。
「大好きです……」
 そっと、触れるだけのキス。唇から浸透した熱が身体中を駆け巡る。甘い疼きに支配されてゆく。
「……ん、っ」
 僅かに漏れた吐息さえもはや煽るものにしかならない。
 角度を変え、やがて大胆に深さを増してゆくキス。互いの領域を越え、舌を絡ませるのにさして時間は掛からなかった。
「ふ、…ぁ、」
 しっとりと重なる唇を舐め辿れば、それが合図のようにふわりと開かれる扉。誘われるように押し開き、蝶のように甘い唾液をねだる。歯列の先を舌で撫で、花から花へ飛び回るように巧矢は夢中でその蜜に酔った。
「……たく、や」
 静かな空間にふたりきり、それを埋める荒い呼吸。縋るような指先にどうしようもなく愛しさが募り、再び吐息を奪うことに集中してゆく。
「巧矢……あかん、て……」
「もっと欲しい」
「アホ……朝っぱらから、何、言うて…っ」
 言葉尻すら掠め取り。
「もっと安曇さんを感じたい」
 不覚にも赤面した美人の首筋に顔を埋める。
「んっ」
「安曇さん……」
「あ、跡付けたらあかんで!」
「マーキングは犬の習性でしょ?」
「アホ。おまえこんな時だけそんなん言うて……んっ あ、ちょお、……ん、んっ」
 白い喉元、綺麗に咲いた赤い花。それをなぞりながら巧矢は目を細めて言葉を紡ぐ。
「俺の好きな人、って意味ッスね」
「……アホッ」
 どうしてくれんねん、と眉を寄せるのを軽くいなすように額にくちづけた大型犬は、ポケットで鳴り出した携帯電を取り出しアラームを止めた。
「あー、もうこんな時間」
 そして眉を下げ、ホントに残念なんスけど、と付け加えた。
「学校行かなきゃ」
「あぁ、ほな送ろか」
「何言ってんですか。病人は寝ててください」
「その病人襲ったんはドコのどいつや」
 へへ、と照れ隠しに頭を掻いてみたりしつつ、それでも名残惜し気に抱き締めて。
「ねぇ安曇さん。その……嫌じゃなかった?」
「なんや、今更やな」
「うん、でも俺、なかったことにされるのが恐い」
 ホントに大好きだから。そう付け加えると「それはもうえぇっちゅーねん」というなんとも微笑ましいツッコミが返る。
「どーせおまえはハッキリ言わんと納得せぇへんやろし」
「うん」
「せやけど、何でもかんでもいっぺんに聞くんはナシやで?」
 そう言って右手を伸ばした家主は、ポンポン、と巧矢の頭を撫でる。まるで飼い犬をじゃらす仕草が妙に板につき始めたことに気付かないのは当人だけか。うんうん、と何度も頷いて見せるのに安曇は苦笑を噛み殺しつつ、だがハッキリと言葉にした。
「ほんまに嫌やったらキスなんてようせん」
「ホント?」
「あぁ」
 大袈裟に長い長い息を吐いた巧矢は、だが次の瞬間目をキラキラさせて視線を戻す。
「じゃあ、じゃあ、良かったッスか?」
「アホ。調子乗んな」
「う〜〜安曇さんのケチ〜〜〜」
「いっぺんに聞くな言うたやろ。……お預けな」
 それより時間えぇのか、と問うのに時計を見れば既にヤバイ。
「すいません、俺、帰ります!……あの、お大事に。また配達で寄りますから」
「おぉ。気ィ付けてな」
 ぞんざいに振られた手ですら愛しく思えて仕方ない。後ろ髪引かれる思いで安曇宅を後にし、大学に直行する間中、ずっとニヤケていたとしても今日ばかりはご愛敬。

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まずは第一段階クリア! 予想以上に濃ゆいキスシーンになりました(^-^;)
これでもまた落ちてるわけじゃないとか言ってしまうのが女王様受けです。

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seasons #24 に続く