seasons #24
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パタン、と締まったドアの音。
慌ただしく駆け出して行く足音が遠離るのを聞きながら、徐々に我に返った安曇は思わず眉根を寄せ、目を閉じた。
つい今し方の衝動。
胸の奥から突き上げる熱情。
───彼の気持ちには早い段階で気付いていたと思う。あれほど好意が分かりやすい相手というのもそういない、というほど喜怒哀楽がハッキリしている巧矢は、安曇がこれまで関わってきた人間達の中でも異色の存在。その生い立ちからいって、両親亡き後は親戚間をたらい回しに育てられ、他人との距離感ばかりを肌で感じるようになった自分には、あんな風に無邪気に壁の綻びを潜り抜ける者がいると予想することすらなかった。
それを察してからというもの、知りたいという気持ちは日に日に強くなった。彼の想いがどんな風にあり、どこに向かうものなのか。向けられた眼差しが親愛や羨望のレベルに留まらず、情欲までをも含んだ深いものであるとの確信を持った瞬間、確かめたいという衝動が胸を突いた。
「だからって、なぁ……」
軽く揺さぶりをかけるだけのはずだったのに。
揶揄うはずの言葉は強烈なインパクトと共に自分に返り、気付いた時には止められなくなっていた。
俺、安曇さんが好きです───
物怖じせず、躊躇いもせず。
潔く伝えた表情には清々しささえ湛えている。
これまでの人生において何度かこんな場面に遭遇し、それなりに出会いと別れを経験してきたはずなのに、そのどれもがこんなに胸を熱くしたりしなかったことに今更ながらに気付いてしまった。
ほんまに嫌やったらキスなんてようせん。
半分正解、半分嘘。あいつは見破っただろうか。
嫌じゃなかった。嫌じゃないから困った。自分から求めてしまいそうになるのを寸でで堪えて指先越しのキスを贈ったことを、煽っているだけと捉えてくれたらいいのだけれど。
「あいつがあんなキスするからや……」
肩を捉えた掌の熱さに眩暈がした。唇を割り開く舌の感触に鳥肌が立った。口内を縦横無尽に味わうような、少し強引で余裕がなくて、全身全霊で求めているのが伝わるようなキス。……感じないわけがなかった。
「男のメンツもプライドもどないせーっちゅーねん」
思い出しただけでも胸がザワリとなる。掌が竦み、全身の血液が集中する。あぁ、自分がコントロール出来ない。こんな経験は初めてだった。
「あー、ヤバイ。あいつのことばっか考えてまう……」
まるで初恋の少年のように頬を赤らめつつ、だがその初々しい反応とは対照的に仏頂面に顔を顰めつつ、無意識にキスシーンを脳内再生しては身悶えるという恋愛中毒の初期症状に見事陥ってゆく。
「あかん……頭おかしなる。きっと熱や。熱のせいやな。そうそう、違いないわ」
独白を強制的に信じ込み、今日も休業宣言をして安曇はベッドに倒れ込んだ。
再び発熱したことは言うまでもない。
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意外と乙女思考な安曇ちゃん。
すまし顔でワンコを手玉に取りつつ、内心はバクバクしてるらしいです。
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seasons #25 に続く
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