seasons #27
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キスの一件以来、まるで新しい玩具を見つけたように巧矢を見る安曇の目は変わっていた。
それがせめて肉食動物のそれではないだけマシだけど、とは巧矢談。頭の回転が速く、それ以上にツッコミのスピードは本場関西人であるだけに容赦がない。当然のようにボケとツッコミの役割分担を担いながら交友を深めていたふたりではあったが、些かの焦れったさもあった。
巧矢としては、好きなので近付きたくて、抱き締めたくて、キスなどもしたいのだがいかんせん、策士の目は誤魔化せない。隙を見せたかと思えば回し蹴りを食らうような間柄にいつまで身が保つのか、一抹の寂しさも過ぎる。
だがそこは難攻不落の高嶺の花。飴と鞭を使い分け、鬼のような要求を出しながら不意を突くキスで周到に事を運ぶ手腕はただ見事の一言である。
そうして日々は過ぎ、仕事の後に一緒に食事を摂る程度ではあったが、幾度かのデートを重ね、少しずつ相手を知ってゆく楽しさにふたり共に没頭してゆく。
「せやからいつも言うてるやろがっ」
「んなこと言ったってヤなモンはヤですっ」
「おまえは子供かっ グリーンピースだけ選り分けんなっ」
少々会話が所帯じみたとしてもご愛敬。
「安曇さんが『あーん』てしてくれたら食べるんだけどなー」
「アホかおまえは。死んで来い」
端から見れば既に立派なバカップルである。
こうした僅かな時間を共有したいがために巧矢はシフトを遅めに入れ、店仕舞いを手伝うようになっていった。肉体労働の仕上げの力仕事に空腹も限界とばかり、食事に誘うのは大抵巧矢の方からで。
「ねー安曇サン。ご飯食べに行きましょーよ」
「俺今金ないねん」
あっさり切って捨てられてもへこたれない。伊達に打たれ強くなったわけではないのだ。
「俺が奢りますから。たまには払わせてくだサイよ」
「学生に払わすわけにいかんやろ。帰って何か作るわ」
「え、俺も食いたい! 何作るんスか何作るんスか?」
「豆ご飯……とか?」
手料理に目を輝かせるワンコを地に叩き落とすセリフはデビルスマイル付き。みるみる半泣きの表情で巧矢は地団駄を踏むものの効果はなく。
「安曇さんの意地悪〜〜〜!」
今や決め台詞の声名高い締め括りと共に1日が終わる。時には運良く近くのファミレスに滑り込むことが出来たが、そこでも一波乱起きないわけがなかった。
「俺のデザートにグリーンピース入れよったんはおまえか!!!?」
食事中手を洗いに洗面所から戻ってきた安曇が席に着くなり、物凄い形相でスプーンを動かす手を止める。
「へっ? あれ、おんなじの入ってましたよね!?」
その発言でこっそり自分の皿から選り分けていただけでなく、相手に押し付けていたことまでが露見する。その上───不運なことに、聞いた内容さえ間違っていた。
「あぁ!?」
「……あ、もしかしてアレってタピオカでした? うわ、えっと、その、すいません……でもあの、新しい発見があって美味しいってこともなきにしもあらずかも知れないような気が……」
「たーくーやー!」
「ははははいっ」
「自分が何したか分かってんやろなぁ!? それ以上グダグダ抜かすんやった耳から手ェ突っ込んで奥歯の虫歯ガタガタ言わすぞ!?????」
にっこり微笑む目がマジだ。
まるでどこかの組連中さながらのドスを利かせた安曇は、それで気が済んだのか黙々とデザートを完食した。
後日、タピオカミルクが彼の好物だと判明したの受け、伊勢丹の地下で購入した箱入りのそれを巧矢が献上したのは言うまでもない。
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ほのぼのカップルに成長したなぁ(遠い目)
地雷を踏むと恐いのが安曇ちゃん。地雷を踏むと面白いのが巧矢(酷)
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seasons #28 に続く
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