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 2008年06月 

seasons #32 

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 答えはもう、ふたり共に知っていた。

 会いたい、という声が電話口から滑り落ちる。退院後、久しぶりに聞く低く掠れた声に安曇は身体が熱くなるのを感じた。徐々に狭められる逃げ道、それすらも快感に思えてくるほど。
 口実に誘った夕食の味すら覚えていない。心配掛けちゃいましたから、と言って奢ろうとするのを止めようと腕を伸ばした瞬間、サラリと身を翻し抱き寄せられる。個室なのをいいことにさり気なく重ねられた唇、その感覚に煽られないわけがなかった。
 店を出て、タクシーを拾って。
 車窓から流れる夜景を目に映しながら、なにひとつ冷静に考えられない自分がいる。隣では普段の賑やかさを押し隠した相手が頬杖を突きながら外を見ていた。
 そっと、伸べられた右手。
 ふたりの間で絡む指先。
 あぁ、いつの間にこんなことが出来るようになったのだろう。自分より4つも年下のかわいい学生だと思っていたのに。
 時折、確かめるように指の節を撫でる仕草に胸が鳴る。このドキドキが肌を通して伝わってしまう気がして、けれど心地よい刺激に振り切ることも出来ず、安曇は必死に外に目を遣る。声を出した途端求めてしまいそうで、口を固く引き結んだまま。
 車から降り、部屋に向かう間中、巧矢は手を離そうとしなかった。そこに彼の想いの強さと少しの緊張を感じ取り、ふわりと胸が一杯になる。もっと余裕の無いところが見たい。必死な声が聞きたいと思った。
「安曇さん……」
 ドアを閉めるなり、性急なキス。
 もう待てませんと吐息に混じる低い声に全身の血が沸騰した。ぞくぞくと背筋を駆け上がる快感が欲望の火種に火を点ける。するりと割り込んだ舌が甘やかな疼きを与えてゆく。触れられたところすべてに熱が籠もる。
 熱い。熱くてしかたない。
「たく、や……」
 囁いた声は自分でも初めて聞くような甘い音。恥ずかしいという感覚は、だが次々襲う快楽の波に煽られ反芻する余裕さえ持てなかった。
 歯列を割り、舌を吸う。ザラリとした感触のそれを自らと重ね、口内を余すところ無く蹂躙して。
「んっ……ん、ふ…っ」
「安曇さん、好きです」
 両手で頬から首筋、肩、二の腕と撫でさすりながら下へと降りてゆく。ゆっくりとした愛撫でさえ身体は敏感に反応した。
「ぁ、は…っ んんっ……」
「……安曇さん、すごいかわいい」
「アホ…言うな……」
「ダメ、言わせて。俺だけが知ってる安曇さんがもっと見たい」
 唇を合わせたまま、掌はやがて胸元へ。親指が胸飾りを弾いた瞬間、安曇の膝がカクンと折れた。
「や…っ」
「かわいい。ホントにかわいい。安曇さん、大好き」
「もぉ、巧矢、おまえこんな時だけSになんなや」
 俺やっておまえの声聞きたいねん。おまえの顔も見たいねん。
 そう付け加えると、予想外だったのだろう、一瞬驚いた表情をして見せた巧矢は、次の瞬間花が咲いたように破顔した。
「うん。俺の全部を安曇さんにあげる」
「ホンマに?」
「もらってくれます?」
「あぁ。……そん代わし、全部な」
 ニヤリと口端を持ち上げて笑って見せると、巧矢はより一層目を細めた。嬉しくて仕方ないというその表情が何より好きなのだと今改めて惚れ直す。キュ、と痛みを伴う胸の高鳴りに安曇はそっと手を取った。
「はよ、見して……」
「了解です」
 肩を引き寄せ、髪にキスを。
 靴を脱ぐのももどかしく、手を引かれるままベッドルームに傾れ込む。初めての部屋だというのにインテリアのどれひとつにも意識を向けられないのは、きっと目の前の男に釘付けだったから。月明かりだけが差し込むベッドの上で、覆い被さる瞳が情欲に閃いていた。
「安曇さん、俺に全部くれますか?」
 ごくり、喉が鳴る。
 ふわり、腕を伸ばし。
「……あぁ。おまえにやる」
 心して受け取れよ、と付け加えられたのを深い笑みで快諾した巧矢は、再びそっと唇を寄せた。

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実はこのシリーズは、書きながら同時進行でプロットを決めています。
どこに行くのか風任せなのもたまには一興と余裕ぶっていたら
かなりの長編になりそうなことが判明。ひ、引き続きよろしくです〜(^-^;)

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seasons #33 に続く