seasons #39
←前話へ
辿り着いたそこは、昼間とは雲泥の差だった。
センスの行き届いた店構え、そして店内のインテリア。ドアを開けるとベルの音がカランと鳴る、一見喫茶店のような雰囲気でありながら、深い色合いで統一された床、テーブル、そして椅子がアルコール棚を綺麗に浮き立たせている。凡そ学生の身分では足を踏み入れる機会さえない夜の世界、ましてや男だけの世界に大いに気後れを感じていたその時、巧矢は明るい声に呼び止められた。
「ごめんなさい、遅くなって」
店を開ける準備を途中で抜けてきたのだろう、スタッフと覚しき男性が慌てて駆け寄ってくる。サラサラのセンターパーツ、切れ長の眼差しが中性的な印象で、またも巧矢は度肝を抜かれた。
「……ん?」
「あ、あぁ、すいません」
そんな挙動不審さの原因を見抜いたのだろう、スタッフは屈託のない笑顔を浮かべてみせる。
「免疫ないのね。びっくりした?」
「すいません、実は昼間にあっちのバーに行って……」
掻い摘んで説明すると、コウと名乗ったバーテンダーは気持ちいいくらい爆笑した。
「あそこ行ったの!? あー、そりゃ驚くわよねぇ。よく無事だったわね」
「もー、えらい目に遭いました……」
「ウチは全然違うから安心してね」
「みたいッスね。よかった」
再度胸を撫で下ろし、初対面とは思えない意気投合っぷりを発揮しながら、そういえばと本題のカサブランカを手渡す。それを目にしたコウの喜びようたるや、安曇を連れて来るべきだったとしみじみ感じ入ったほどだ。
「きゃー! 素敵! 凄い! 綺麗!」
諸手を挙げて万歳のポーズ。そして拍手喝采の歓声を送る。
「いい香り……。こんな素敵なお花届けてもらえて嬉しいわ」
「そう言ってもらえると何よりッス」
実は早く見て欲しくてお店から直送便なんスよ、と付け加えると、巧矢の正直さにコウが吹き出した。
「ホントに!? なんてラッキーなのかしら!」
「内緒にしてくださいね」
「ふふふ。やっぱり seasons は違うわね。お花も、プロ意識も」
「もしかして、以前にもご注文いただいてます?」
巧矢の問いに軽やかに頷くと、コウは大輪の花を見ながら目を細めた。
「誕生日に初めてここのお花を活けさせてもらって、それがホントに綺麗だったの。育てる環境もそうだけど、届いた時の対処が凄く丁寧で……。お花が大好きな人がやってるお店なんだなぁって一目で分かったわ」
一言ごとに胸が熱くなる。彼を褒められたようで嬉しくなった巧矢は、初めの緊張などどこへやら饒舌に話し始めた。
「安曇さんは人一倍花に厳しくて───あ、店長なんスけど」
「うん、分かる。関西弁の人ね」
「それはもう自分に厳しい上に他人にも厳しくて、俺なんかしょっちゅう蹴っ飛ばされたりしてるわけなんですが」
「でもそこがいいところ?」
「そーなんスよ……。花とか俺全然分かんなかったんですけど、安曇さんに教えてもらってちょっとずつ勉強してるんです」
「頑張ってるのねぇ」
「やっぱ、花を見てる時の安曇さん、いい顔してますから」
「そしてそんな時の店長が好きなのね」
「えぇえぇそりゃあもう……って、え? えぇ!?」
俺言いましたっけ、などと呑気なことを聞き返す巧矢をコウは派手に笑い飛ばした。
「一直線でいいわぁ〜〜」
「いや、ちょっとコウさん、内緒ッスよ!?」
「アタシは言わないけど……」
でもすぐバレると思うわ、なんて。
呑気に笑うバーテンダーの傍ら、耳まで赤くするドライバーがひとり。それが黄昏時のせいだなんて言い訳は残念ながら通用しない。
----------
お久しぶりのコウちゃん登場でテンション鰻登りです(私が/笑)
このふたりって実は一番ホモップルぽい……相手にメロメロなトコが特に……。
お気に召しましたら「BL小説」バナーをクリックしていただけると嬉しいです♪↓
seasons #40 に続く
- | HOME |