seasons #41
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翌日。
配達で店を訪れるなり、巧矢は満面の笑みで昨日の戦果を報告した。
「安曇さん安曇さん、昨日ね、カサブランカ凄く喜んでもらえましたよ!」
荷物の検印など後回し。取り敢えずは店長を奥に引っ張って行くと、待ち切れないとばかり言葉を続ける。
「安曇さんがお花大事に扱ってくれるのが分かるって。だから seasons のお花は違うって、ships のバーテンさんが」
「そんなん言うてはった? 嬉しなぁ」
「ね。俺も凄く嬉しいッス」
珍しく無防備に頬を緩ませる姿を充分堪能した後で、巧矢は起爆剤を投下した。
「あ、ついでにね、安曇さんを好きなこともバレました」
「……は!?」
「いやー、鋭いですよね、あの世界の人はー」
「いうかおまえがモロ出しなだけやろ!?」
「……人を変態みたいに言わないでくださいよ……」
似たようなモンだとの追い打ちにヨヨヨと泣き崩れつつ、そういえばもうひとつ言うことがあったっけ。
「でね、お店の前ですっかり意気投合しちゃって、本格デビューしてきました」
「おまえ苦手ちゃうかった?」
「コウさんいい人なんですよー。ついでにコウさんの彼氏さんにも会っちゃった」
「……どこまで行くねん、おまえは……」
自分の記憶が確かならばその直前は半泣きだったはずなのにと訝しがる安曇を余所に、勝手が分かってきた配達員は的確にポイントを狙い打つ。
たとえばそれは、こんな風に。
「彼氏さんにもお花褒められました」
「そ、そら……えぇけどさ……」
途端、店主の頬が緩むのが見える。なんて分かりやすいと思っても苦笑に止め、決して口に出してはいけない。それが処世術というものである。
「カサブランカってコウさんの好きな花なんですって。だからふたりともにっこにこで」
まんざらでもない表情に目を細めつつ、ふと昨日の遣り取りを思い出した。
「そういえば、安曇さんはもっとシンプルなのがいいって言ってましたよね」
「あぁ、好きな花の話? んー、せやなぁ。カサブランカはちょっとゴージャス過ぎるわ」
「じゃあ薔薇とか?」
「大差ないほど豪華なん選んでどないすんねん」
「なら……えーと、マーガレット?」
「お、勉強の成果か?」
珍しく花の名前が出て来たことで安曇の瞳がキラリと光る。その期待した様子に少々押されながらも、巧矢は必死に頭の中の植物図鑑を捲っていった。
「シンプルなんでしょー? ……んーと、チューリップとか、ベゴニアとか……あとえーと、菫とか?」
「イイ線いくやん。頑張ってんな」
よぉ覚えたな、と頭を撫でられ、文字通り大型犬はご機嫌だ。そんな子供のような笑顔につられて笑った飼い主は、アレ、と言って白い花を指差した。
「……カラー、でしたっけ?」
太く真っ直ぐに伸びた茎。萼に向かって少しずつ黄緑色に移り変わるグラデーションが白に映える。まるで折り紙のそれのように黄色い花びらを取り巻く白い萼が、あらゆる装飾を圧して潔ささえ湛えていた。
「あ〜〜〜〜〜。うん、分かる。安曇さんて感じします」
何度もコクコクと頷いて見せると、彼は眉を下げて苦笑した。
「妙に納得してんなぁ。そういうおまえは何が好きなん?」
「俺? 向日葵!」
「うわ、分かる! 巧矢っぽいわー」
「な、なんスかも〜〜。ホラ、自分だって」
「ホンマやな」
顔を見合わせて吹き出して。
お互いのことを少しずつ知って。
穏やかな午後、話は止めどなく続いてゆく。
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<カラーの豆知識>
花びらに見える部分は植物学上「苞(ほう)」と呼ばれる部分で
萼(がく)が変化したもの。雌しべに見える黄色い部分がお花です。
ちなみに白いカラーの花言葉は "乙女の美"。
狙ったわけでもないのに、安曇ちゃんたら……www
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seasons #42 に続く
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