seasons #45
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秋の初まりは静かに訪れた。
あれ以来顔を出さなくなったドライバを思い、安曇は今日も鳴らない電話を放り投げる。配達はもう随分前から別の担当者が割り振られたようで、本格的に接点を失ったことを痛感した。
最後に見たのは涙顔。
あんなに混乱した巧矢を見るのは初めてだった。
安曇さんに会えなくて寂しかった
なんて率直な告白。だからこそそれが出来ない自分には重くのし掛かる。
会えなくて寂しいなんて感情は子供の頃になくしてしまった。両親を揃って亡くしたあの夜、どれだけ泣いても戻らない人、返らない言葉があることを知った。それがずっと尾を引いているのかは分からないけれど、少なくとも今の自分は第三者の存在に依存して生きることは出来ない。また失くしたらと思うとそれだけが恐かった。
なのに、あいつに会って、惹かれていって。マズイと警鐘を鳴らす第六勘に耳を貸さずその手を取ったのだけれど───こうして簡単に関係は崩れてしまう。そうしてまた、失くそうとしている。それがどんなに胸を抉る痛みか分かっているのに。もう二度と戻らないことがどんなことか、知っているのに。
「……嫌や……」
口元を覆う。いなくなって初めて分かる巧矢の存在の大きさに動揺を隠し切れない。街のショーウィンドウ、映った自分の情けない顔に安曇は力任せに唇を噛んだ。
どうしよう、どうすればいい。求めるのが恐い、失くすのが恐い。
足早に行き交う人波の中、安曇は歩みを止めた。
「あ、……」
視線の先。かわいらしいワンピースに身を包んだ女の子と巧矢が歩いているのを目にした瞬間、不安は焦燥に変わり一気に喉元を突いた。それがたとえ大学の同期で、出し忘れたレポートに必要な書籍を見繕ってもらっていた相手だとしても、蚊帳の外の安曇には分からない。現実は、楽しそうに肩を並べて歩いているふたりの姿、ただ、それだけ。
くるりと踵を返すと路地裏に逃げ込む。コンクリートの壁に凭れ掛かると、そのままズルズルと膝を折った。
「かわいい子、やったなぁ……」
まるで春の花のような。
「やっぱそれが普通やん」
年上の男ではなく、守ってやりたくなるような女の子の隣。
「そうじゃなきゃ、家族は出来へん」
あぁ、どんなに理屈を付けてみても。
「……かなんなぁ……胸痛ぅて、立たれへんやん…………」
頬を伝う涙の熱さだけが、今唯一信じられるもの。
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こういう理由か、と書きながら自分で納得してました。
安曇ちゃんが殻を脱いでくれたらふたりは一歩進むのに。
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seasons #46 に続く
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