seasons #47
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時間がこんなにあっという間に流れるなんて知らなかった。
巧矢が仕事を終え、再び店に顔を見せるまでの間、どんな顔をして渡せばいいのか、どう心の整理をつければいいのか、それだけを思い巡らせて。考えれば考えるほど頑なになってゆく己の心の正直さに、感情は理性に追い付けないものだと思った。
「わぁ、凄い綺麗。さすが安曇さん」
出来上がった花束を渡すなり、巧矢は手放しでそれを褒めた。満面の笑みで喜ばれればこれ以上なく嬉しいはずなのに、今はその背の向こうに第三者を見てしまう。
「よかったな」
「もう、想像以上ッスよ。ありがとうございます」
カラーってこんなに綺麗なんですね、と矯めつ眇めつ首を傾げていた巧矢は、ひとしきり堪能するや否や安曇の方に向き直った。
「じゃあ、俺と一緒に来てください」
予想だにしない発言に動きが止まる。言葉の意味が分からない───否、行く先に誰かが待つ場所について来いと言うなんて。
「なんでや。ひとりで行ったらえぇやん」
「安曇さんいなきゃ意味ないです」
「せやからなんで俺やねん」
「俺の好きな人だからです」
あぁ、まるで堂々巡り。信じられない。信じたくない。何を思えばいいのか分からない。何に応えたらいいのか分からない。
「おまえが分からん……」
す、っと視線を外し、俯いた安曇の肩に大きな掌が触れた。それはゆっくりと力を込めて広い胸へと抱き込んでゆく。
「混乱させちゃってごめんなさい」
何度も何度も背中をさする手。あの頃と変わらないぬくもり。
「お願い、安曇さん。一緒に来てください」
再び見上げた眼差しは真剣そのもので、誰かの影も、世間の風圧も、何ひとつ入り込む余地を見せない。もしかしたらそれは見せ掛けかも知れない。やめておけばよかったと後悔することになるかも知れない。それでも……それでも賭けてみたい、と思った。
ゴクリ、喉を鳴らして咽喉を下げ、安曇は真直ぐに答えを返す。
「……分かった」
店仕舞いもそこそこに連れ立って外に出る。
秋の匂いが漂う宵闇の中、ふたりはただ黙ったまま歩いた。何か話したらそこから想いが溢れてしまいそうで、一言も漏らさずに歩を進める。
そうしてどれぐらい歩いただろう、辿り着いた先は小さなスタジオだった。
「撮影所…?」
「はい。紹介したい人がいるんです」
周囲を見渡していた安曇の背に悪寒が走る。やはり最悪な結末だったか、と目を閉じた瞬間、掛けられた声は何故か男性のもので。
「やぁ、いらっしゃい」
「あ、渉さん。こんばんはー。お言葉に甘えて例のお願いに来ちゃいました」
「よく来たね。……あぁ、そちらが "安曇さん"?」
「……へ?」
目を白黒させる安曇を挟んで、片やワクワク顔の仕掛け人、片や穏やかな笑みのカメラマン。
「えーと、はじめまして?」
「こんばんは。吉岡 渉といいます。お話はかねがね」
「安曇さん、詳しいことは後で話しますから……あ、渉さん、更衣室借りていいスか?」
奥を指差す巧矢に渉が軽く頷いて答える。
怒濤の勢いで顔合わせを済ませた一行は、一旦バックヤードに下がることで停戦となった。
さぁ、ここからが、勝負本番。
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#40 で ships でふたりが出会った際、渉が巧矢に対して
「記念があったらスタジオにおいで」と言っていたのはこの回の伏線でした。
ここから一気に行きますよー!(>_<)/
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seasons #48 に続く
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