sign #27
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キュ、とシャワーが止まる音がして身体が跳ねる。
まるで初恋をした高校生のように、その一挙手一投足にドキリとしてしまう自分に、渉は苦笑を浮かべるしかなかった。これまでの恋愛経験からいってもまるで自分らしくない、匙加減が分からない。
心から誰かを好きになると、こんな風になるんだな。
そう口端を持ち上げる頃、風呂場から意気揚々と出て来るコウと目があった。……だが。
「コウ!?」
「ん?」
驚いて思わず絶句したのにはそれなりの訳がある。上半身にパジャマ、そして下半身には何もない。長さ的には太股スレスレといったところか、かなり際どい絵面である。
「上下出しておいたと思うけど!?」
「んー。これはですねぇ、男のロマンです」
「は?」
目を白黒させるのを面白そうに見上げると、わざとらしく小首を傾げた小悪魔は楽しそうにくすくすと笑った。
「ひとつのパジャマを半分コするの。だから渉はズボンだけ履いてね♪」
「……それはいいけど……コウ、寒くないかい?」
「まだ大丈夫。……早く来て、あっためてね?」
「……まったく」
君には敵わないな、と苦笑すると、追い掛けるように満面の笑みが咲いた。
「じゃあ待ってて。急いで入って来る」
風のようなキスを贈り、入れ替わりでシャワールームへ。その背を見送って、それまで強気な姿勢を貫いていたコウはベッドに腰掛けるなり、ようやく全身の力を抜いた。
「はー……」
ドキドキした。今も心臓がうるさいほど鳴っている。渉に聞かれたかも、そう思うほど頬が熱くなるのを抑えられない。
「だってどうしていいか分かんないんだもん……っ」
テンションを高めにしておかないと緊張と期待で動けなくなりそうで。多少ギクシャクしてでもフリーズするよりはマシだろうと、恋人の困り顔に心で手を合わせつつ力業で乗り切った。
「あー、でもどうしよ。渉出て来たらどうしよ……」
今更のように胸に手を当てる。バクバクしている心音に煽られるように、置いた掌さえ激しく脈打つことに気付き、自分の身体の現金さに思わず眉を下げる。
「でも、しょうがないよね。今渉の家にいるんだもんね」
想いを告げて、受け入れて。初めて訪れた恋人の家で彼を待つ、そのシチュエーションで緊張するなという方が無理なのだ。と、半ば強引に自分に対して言い訳をすると、コウは改めて大きめのパジャマの袖口を見下ろした。
「……ふふ。渉の匂いがする」
洗濯されたばかりなのに、鼻を寄せれば仄かに香るコロンの香り。彼の腕の中でも同じ匂いに包まれたことを思い出し、そっと両手で自分を抱き締め、肺の奥まで吸い込んでみる。途端、胸が疼くような甘やかな痛みに、またも心臓は早鐘を打った。……その時。
「……コウ?」
不意に背後から呼ばれ、ビクンと持ち上がる肩が如実に語る。
「どうしたんだい?」
「あ、えと……」
もはや恥ずかしくて振り返ることも出来ず、そのままの体勢で言い訳を考えていたところに、ふわりと触れたのは濡れた感触。
「お待たせ」
後ろから渉に抱き締められたのだ、と気付いた時には緊張と羞恥と嬉しさで、文字通り言葉を紡ぐことさえ出来なかった。
「コウ…」
「……あ、」
パジャマの薄い布越しに感じる、それは彼の素肌の感触。ズボンだけ履いてという恋人のリクエストをきちんと実行に移してくれたらしい彼は、当然のように上半身裸の出で立ちである。視界端に映る逞しい腕を見るなり軽い眩暈すら感じてしまった。
「わ、渉……」
「うん?」
「そんな、急がなくても、大丈夫だったのに……」
「待たせたくなかったんだよ」
サラリと返した恋人は、だが「いや、少し違うかな」と一拍置いて正しいところを言い直した。
「僕が、早くコウに触れたかったんだ」
「……っ」
あぁ、そんなストレートな言葉、胸に刺さって抜けなくなるのに。
案の定、呼吸さえ苦しくなったのは恋の病の悪化のせいか。耳まで赤らめる恋人を抱き締めたまま、家主はそっと室内の照明を落とし、フットライトに切り替えた。
一瞬、奪われる視界。
だからこそ、ハッキリと感じる相手の体温。
息遣いさえも伝わってしまいそうで、思わずグッと喉に力を入れるのだけれど、それさえもお見通しといわんばかりに渉の手がコウの両腕を解かせた。
「そんなに固くならないで……大丈夫だから」
ガラス細工を扱うように丁寧な仕草。怖がらせないようにと細心の注意を払う恋人の優しさに、愛しさで胸がキュッとなる。そっと首を後ろに回せば、待ち構えたようにキスの雨が降った。
「……ん、っ」
「コウ……好きだよ……」
それは心を委ねる魔法の言葉。
長い夜が始まろうとしていた。
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わーわーわー。書いてる本人が一番恥ずかしいこのカップル……!
明日からR18なので苦手な方はご注意を。お好きな方(同志!)よろしくです!
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sign #28 に続く
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