seasons #50 

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「なぁ……ところで、待たせといてえぇの?」
 降り注ぐキスの雨をかいくぐり、ポロリと零れた疑問。そういえば……と逡巡したワンコは事の発端を思い出すなり見えない耳をピンと立てて目を輝かせた。
「そッスよ、写真! 写真撮ってもらいに行きましょ!」
 安曇さんブーケ持ってね、と念を押され、何の羞恥プレイか人前でバカップル振りを見せつける羽目になる。一足先に廊下を走って行く犬にはもはや拒絶も届かず、しぶしぶ向かった先は目映いスタジオ。
「……うっわ、これで撮るってホンマに……?」
 どう見ても本格的なセット、素人の自分にはレフ版の前に立つことさえ躊躇われる、のに。
「わー! 超テンション上がるー!」
 どこかのワンコは大はしゃぎの様子。しぶしぶ付いて行くと今度はカメラを抱えた渉に褒め殺しに遭う。
「安曇さん、うつり映えするんですねぇ。モデルみたいだ」
「いいいいや、その、まったくそーいうわけでは……」
 心なしか後退る安曇を押し止めるのは自分の役目とばかり、背後に構えた相手が憎い。そんなふたりの仲睦まじい様子に目を細めたカメラマンは、大振りな仕草で中央を指した。
「さぁさぁ並んで。今夜は貸切だからね、恥ずかしがらないで、リラックスして笑ってね」
 ふたりとも背があるからサマになるなぁ、なんて。プロのモデルならどうということなく受け流すか、もしくは綺麗な笑みのひとつも向けて応えるのだろうけれど、いくら自分達だけとはいえ緊張するなという方が無理である。ゆえに。
「じゃあ巧矢くん、思い切ってホッペにキスしてみようか」
「はぁ!!?」
「わぁ、それいい!」
 他人様の前どころかカメラの前でまで痴態を晒すことになる。あぁ、なんという厄日。
「安曇さん、あの、力抜いて?」
「恥ずかしいんやからさっさとしろっ」
「もー、ホント照れ屋さんなんだからー」
「おまえに羞恥心が足りないだけやっ」
 小声で遣り合いつつ、隙を見計らって小さなキス。
「……ん、」
 次第に赤みを帯びる頬。
「安曇さん……」
 胸に広がる甘い微熱。
「なんやろ……あかん……」
 忽ち全身に廻る媚薬。
「ドキドキした?」
「ん、した……」
「もっかいしていい?」
「……ん」
 今度は続けて 2度、3度。ちゅ、と耳元に届く音を響かせて、巧矢の唇が優しく頬に触れて行く。意識していないと抱えたカラーを落としそうで、もう少しだけ温度を感じていたくて、安曇はそっと目を閉じた。
「安曇さん、凄い綺麗」
「光のせいやろ」
「そんなことないもん。へへ、こんな近くで見れて嬉しいな」
「いっつも見てるやん」
 名残惜し気に離れてゆくのを目で追って、その視線の動きにつられるように前を向いてはじめて。
 パシャリ。
「……あ、」
 この一言がすべてを表していた。
「ハハ、さすがキスの効果は大きいね」
 完全に蚊帳の外の渉が黙々とシャッターを切っていたことは明白で、つまり、恐ろしい数のノロケ写真製造中という状態である。
「……あー……」
「まぁまぁ、後から見ればいい思い出だよ。僕だって撮って欲しいぐらいだ」
「あれ? 渉さん被写体はやらないんスか?」
「そのうちやってみたいんだけどねぇ」
 ふふふ、と蓄えた髭に意味深な笑いを含ませつつ、渉は徐々に慣れてきたふたりを弄ることに専念し出した。
「せっかくブーケとブートニアだから、いろいろポーズも取ってみようか」
「……うっ。それ、人に言われるとものごっつ恥ずかしいわ……」
「いいじゃないですかー。俺は安曇さんにブートニアもらえてすんごい嬉しいわけですしー♪」
「もーそれ言わんときっ」
「やだやだー」
「子供かおまえはっ」
「だって好きなんだもんっ」
 真っ赤な頬を膨らませ。
 青いリボンをはためかせ。
 白いシャツの襟を立てて。
「よし、その表情!」
 また最高の絵が切り取られてゆく。

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こんなのただのバカップル晒し撮りですよ!!(悶絶)
渉ごめん、ホントごめん……南無ー…(-人-)

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seasons #51 に続く

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