faith #06 

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 涼しい風が首筋を掠めてゆく。
 日中の熱さなど忘れたように、赤褐色の王宮は夜の冷気を取り込んでいた。ひんやりとした床の感触は素足に心地よく、身に纏う布地さえサラリとした音を立てる。───今は別の意味で衣擦れを響かせているわけだが。
「シヴァ!」
 背中から回された腕が巧妙にも胸のボタンを外そうとしていたのを一喝し、慌てて前を掻き合わせる。
「……抵抗されると燃えるな」
「あからさまに嬉しそうな顔しないでくれる!?」
 身の危険を感じ懐から抜け出そうと藻掻くものの、こんな時逞しい体躯との差が恨めしい。ビクともしない腕相手には何を遣っても徒労に終わり。
「諦めたか?」
「なんの、これしき…っ」
 だが強がりとは裏腹に肩で息をしているのがおかしかったのか、シヴァは笑いを噛み殺しながらポンポンと頭を撫でた。
「おまえは何もかもが新鮮だ」
「……それ、褒めてる?」
「あぁ」
 長い指先はそのまま髪に潜り込み、一房ずつ梳いてゆく。強引さとは対照的な、ひどく優しい動きに正直戸惑いを隠せなくて。
「だからおまえをずっと側に置きたい」
「シヴァ…」
「俺のものになれ、セージ」
「……そ、んなこと、言われても……」
 困る、と続けるはずの言葉は、だがこちらを凝視する紫紺の瞳に吸い込まれた。
「セージ…」
 先程とは打って変わった真剣な表情。痛いくらいの眼差しに射貫かれた身体は何ひとつ思うとおりにならず、ただ真直ぐに見上げることしか出来なかった。
 月光を浴びた褐色の肌は艶めかしく、月の雫に縁取られた睫が頬に影を落とす。濡れたように光る双眸はアメジストのようで、その奥にある熱情さえも受けて怪しく輝いていた。
 高く通った鼻筋、意志の強さを表す眼差し。恵まれた体躯、低く響くバリトン。
 同じ男として欲しいと思うものすべてを体現している相手を前に、羨ましいという思いを越えて、それに触れてみたい、甘受したいと思う自分がいた。

 おかしい。俺、どうかしてる───。

 我に返ると同時に気付く、身体の異変。まるで逡巡する思考を止めようとするかのように、何かが意識を奪ってゆくような、不思議な感覚。
「なんか、フワフワする……」
「ムラムラの間違いじゃないのか?」
「へ? まさか、毒でも盛った!?」
 咄嗟に身構えようとする細い肩を抱き寄せつつ、王子は広い部屋の一角を指した。
「バカ。香だ。あそこで焚いてる」
 見遣った先にはインセンス。
「あぁ、そうなんだ。……いい香りだね」
 吸い込むほどに身体の芯がジンと痺れる。全身に行き渡る甘い熱に、それまでの緊張が解けてゆくのを感じた。
「気に入ったか?」
「うん…」
 熱に浮かされ、熱に溶かされ、徐々に薄れてゆく意識。光が霧散するように深い昏睡に落ちる途中、くちづけと共にバリトンが囁いた。

「覚えておけ───俺だけが焚ける香りだ」

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最近図らずともドS祭になってるみたいで嬉しいです(笑)
ポチ/拍手/コメントもたくさんありがとうございます。やる気満々です!(>_<)/

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faith #07 に続く

コメント

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シヴァ・マジック……(笑)

秘密コメントくださったYさま>
 おおお、素早いコメントありがとうございます!
 エロスむんむん、って凄い表現ッスね!
 まさにシヴァっぽい、濃そうな感じがします(笑)
 これから先もあの手この手でセージをメロメロに
 させると思いますので、見守ってやってくださいませ♪

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