faith #17
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室内に足を踏み入れた途端、ひんやりとした感触に身を竦ませる。先程までとは打って変わった静かな空間に、訪問者は息をするのも忘れて周囲を見回した。
「……凄い……」
高い天井に施された彫刻は、数種類のタイルを組み合わせ蜘蛛の巣状のモチーフを立体的に表現したムカルナス形式。東方で発祥し、発展したものが、その後伝わったのだという。夥しい数の立体装飾、植物模様。まるで古い寺院を思わせる荘厳な雰囲気に、セージは知らず背筋が伸びるのを感じた。
「どれくらいの年月が掛かったんだろうね……」
「きっと、気の遠くなるほどの長い時間を要したでしょう。私は宮殿のどこを見ても、細やかな手仕事を施した職人達の想いを感じずにはいられません」
「……うん、本当だね」
ゆっくりと室内を横断し、再び窓際へと身を寄せる。幾分陰ってきたとはいえアーチ状に刳り抜かれた外の景色はまだ明るく、床に零れ落ちる陽光によってタイルが綺麗に浮かび上がっていた。
「これも、手作り?」
「えぇ。宮殿内に敷き詰められたタイルすべて───。あぁ、セージ殿、これを」
「ん?」
指差された方に目を向けると、更に促すようにガネーシャの手が腰を抱く。密着した身体にさして違和感を覚えなかったのは随分と心を許したからか、それとも薄暗い室内のせいか。
「タイルの形はひとつではないのですよ。丸いもの、四角いもの、また複数の線を組み合わせて独自の形を作っているのです」
「あ、言われてみれば……八角形?」
指先で輪郭をなぞりながらセージは手元に夢中になる。傍らのオッドアイが自分を見つめていることなど意にも介さず。
「こうして互いにぴったりと敷き詰めることが出来るのも、精巧な作りの賜です」
「これこそ凄いよねぇ、俺がやったら絶対ズレるもん」
自信ある、と言い切るセージに可笑しそうに笑うと、ガネーシャは再び腰を上げた。
「それならばこちらが適任では?」
指差したのは壁に描かれたタイルアート。同じタイルでも一枚一枚の大きさも形もすべて異なっているというものである。逆を言えば填め込むことが出来るのはたった一カ所で、厳密な精度が要求される八角形とは正反対。
「そうそう、こーいう方が向いてるかも。……って、ガネーシャ、俺のこと凄い大雑把なヤツって思ってない?」
「そんなことありませんよ」
「ウソだ、笑ってんじゃんー」
「いえいえ、本当に……」
と言いながら笑いを噛み殺しているから知れたもの。むぅ、と唇を尖らせるセージの隣でなおも笑みを浮かべつつ、ガネーシャは両目を細めて見せた。
「あなたは本当に……かわいらしい方ですね」
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どんどん距離が縮まりつつあるこのふたり、なんだかいい雰囲気です。
とはいえ忘れたままにもいかないので、次回はシヴァの話を少々。
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faith #18 に続く
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