guys #07 

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 授業中の暴力騒ぎから一夜、教室に雪之の姿はなかった。
 朝のショートホームルームで彼の停学が告げられる。淡々とした口調からは感情が読み取れず、けれどその背景にはこれまでの雪之の素行に対する処分までも含まれているようで、普段は信頼している担任教師にでさえ疑いの目を向けてしまう自分が嫌だった。
 事実、停学処分は些か重い。厳重注意か、或いは生活指導室通いの反省文程度で充分だろうと思われたそれが、雪之の場合には停学1週間の自宅謹慎なのだという。前例が少ない常和にあって比較対象は見つからなかったが、それでも決定処分に疑念が残らないわけはない。複雑な思いを抱えたまま律誠は今日もまた職員室を後にする。
「失礼しました」
 ガラ、と音を立てて扉を閉め、溜息をひとつ。以前和哉から聞いていたクラス委員長の重責を今ひしひしと痛感していた。
 問題行動のせいで板挟みになったかつての委員長はよく泣かされたというが、実際こうも頻繁に職員室やら生活指導室に呼び出され、本人でもないのにあれこれと事情聴取をやられては身が保たない。だいたいクラスメイト全員をたったひとりの生徒が面倒見るだなんて、大人の了見はどうなってるんだ───。
 委員長らしからぬ独白に眉を潜め、それでも相手が雪之だからこそ保っているのだということも自覚している。これが他の人間ならとっくに適当な理由を付けて逃げ出しているだろう。
「今頃、どうしてるんだろうな……」
 渡り廊下の窓越し、見上げた夕暮れ。
 寺の鐘が遠く響き渡るのを聞き、律誠は教室へと足を早めた。



 2年E組で停学者が出た噂は瞬く間に学年中に広がった。
 もともとゴシップの類が少ない学校だけあって、こうしたニュースには皆敏感になっている。進級後一段落付いた時期も吹聴に拍車を掛けた。
 比較的早い段階でそれを耳にした和哉はすぐに律誠の元に走ったが、彼は職員室に呼び出されたというけんもほろろな取り次ぎに追い返され、以来多忙を極める彼とはコンタクトが取れていない。電話をしようにも、試合が近い自分は夜遅くまで部活に精を出しているため、彼の実家への迷惑を考えるとそれも憚られた。
 登下校の手段が違う。クラスが違う。放課後の過ごし方がまるで違う。
 昔は共通点ばかりで、差異といえばお互いの容姿や性格ぐらいというほど仲の良い幼馴染みだった律誠も、今や委員長として、ゆくゆくは生徒会を背負って立つ人間として有望視され、自分の時間の殆どを公の仕事のために費やしている。彼が部活をしないのではなく、したくてもする時間を取れないでいることを、側で見ている自分はよく知っていた。そんな風に、いつも自分より相手を、皆を優先させてしまう男だった。
 だからこそ、この事態は要注意だ。
 倒れるまで全力疾走してしまう不器用な幼馴染みを分かってやれるのは自分しかいない。少なくともこの長い付き合いがリミットを知らせる。そう自負している。
「なのに……」
 支えてやりたいのに、自分を取り巻く現実がそれを許さない。気持ちだけが上滑りして己の無力さを浮き彫りにする。
「チクショ……!」
 何に対する苛立ちか分からないまま、和哉は力任せに足元の小石を蹴った。放物線を描き空を舞う先、願わくば、現状打開へと続きますように。

guys #08 に続く

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