message
back
非常に個人的なお知らせでアレですが、
11/27〜12/2 は海外挙式のため不在になります。
既にいただいている山のようなありがたきコメントへの
お返事もままならないままの出発で心苦しいですが
どうかどうか、お許しを〜〜m(_ _)m
不在中もコメントレスは一切出来ません。
更新は、12/1までの分は予約できてますので、
これまでと変らず覗きに来てくださいね。
12/2の分は間に合わなかったらゴメンナサイ。
(これまた微妙にもどかしいシーンで切れちゃうので
なんとかしたい気持ちはあるんですが……)
ではでは。
慌ただしくてすみませんが、行って来ます!
よければ、11/29 晴れることを祈ってやってください(^-^)/
ships-2 #32
←前話へ
酔いが回ったとは言わせない。
極力薄めに作ったミントハイはまだ半分も残っているのに、彼が焦点の定まらない目をしているのは酒などのせいではなく、辛過ぎる現実からの逃避を意味していた。
「どうしたの、何があったの」
これまで安里が弱音を吐いたことは何度かあったが、それでもこんな風にアルコールの力を借りなければ話せないほどボロボロになったことは数少ない。彼が初めて ships を訪れた当時を思い出し、やおら警鐘が鳴る胸を押さえながら、コウは慎重に言葉を選んだ。
「我慢しないで吐き出しちゃいなさい、いくらでも聞くから」
「……う、ん……」
辛抱強く待てば、徐々にポツリポツリと明かされる事実。まるで血を吐くように、苦しみに視界を歪ませながら洗い浚い話す安里を見詰めながら、コウは静かに頷き続けた。
何故もっと早くに来なかった、という言葉はすぐに飲み込まされる。それだけ彼の、恋人を信じたいという想いの強さが伝わったから。それが強ければ強いほど、徐々に軌道を逸してゆくベクトルに盲目にならざるを得なかったのが分かる。無垢で、純粋で、不器用な恋愛───だからこそ愛しいと思えた。
「……そっか」
すべてを聞き終え、肩を落とす安里の髪を撫でながら、バーテンダーは目を細めた。
「疑うことは悪くない。疑うほど愛してる自分を愛してあげなきゃ」
「……コウちゃん…?」
思いもよらぬセリフに顔を上げるのを見据え、コウはゆっくり言葉を続ける。
「だって誰も何も言ってないのよ。アサトは1回でもこの話を水瀬さんとした? 水瀬さんの言い分を聞いた? 恋愛はひとりでするものじゃないの。ふたりで作るものなんだから」
「でも……」
「うん。恐いのは分かる。アサトが躊躇うのもよく分かるわ」
だって一生一大の恋ですもの。
そう言って笑う表情が眩しくて、安里はそっと唇を噛む。そうしていないと泣いてしまいそうだった。
「でも、アサトがどれだけこの恋を大事に思っているかは、アサトにしか分からない。アタシ達はそれを想像することしか出来ないの。水瀬さんだってそう。お互い、言わなきゃ伝わらないし、会わなきゃ見えてこないわ」
「何も…?」
「そう、何も。でも、だからこそ、愛してるって言葉は意味があるのよ」
だって凄く嬉しいじゃない、と目を細める仕草に胸が詰まる。
「距離や時間は確かにふたりを隔てる要因にはなるけど、壁じゃない。案外簡単に越えられるように出来てるモンなんだから」
そうしてお得意のガッツポーズで締め括るから。
「……不思議。コウちゃんが言うと簡単に解決しそうな気がする」
「そりゃそうよ。なんてったって恋愛駆け込み寺の住職ですからね」
鮮やかなウィンクが太鼓判を押す。安里は俄に心が軽くなるのを感じていた。
----------
やっぱコウは書いてて幸せだなぁと実感します。さすが幸助。
さて、ここからは大風呂敷を畳みまくりますよー!
お気に召しましたら「BL小説」バナーをクリックしていただけると嬉しいです♪↓
ships-2 #31
←前話へ
ふたりを取り囲む運命の歯車は、それぞれの半径で坂道を転げてゆく。
罪悪感に埋め尽くされそうな安里。
後悔の念で気が狂いそうな水瀬。
互いを想うがゆえに臆病になり、傲慢になり、擦れ違い続ける。僅か数時間の距離がこんなにもふたりを隔てるなんて、考えたこともなかった。互いを取り巻く環境が変るだけで、こんなにも見えなくなると思わなかった。
水瀬に恋人が出来たと思い込んだ安里は、それでも彼を信じたい気持ちと、何度も崩され掛けた出来事の間で神経を極限まですり減らしている。そんな時、僅かな隙間に入り込むようにして現れた藤堂の優しさは、甘美な憂鬱を以て安里を溶かした。
彼は穏やかで、軽やかで、負担を強いない。守るように愛し、抱き締めてくれる。その手を取ったらどんなに楽になれるだろうかと思う一方、それが出来ない理由を安里は己の中に探せずにいた。
心が飽和する。溢れる悲しみの中で溺れてしまう。
堂々巡りに疲れ果てた安里が向かったのは、古巣という名の ships だった。
カラン、と心地良いベルが鳴る。
来客の知らせにパッと顔を上げたバーテンダーは、相手の姿を認めるが早いか頬に手を当てて歓声を上げた。
「やーん。いらっしゃーい♪」
全身から嬉しくて仕方ないというオーラを漂わせ、盛大にもてなしてくれるコウにホッと息が漏れる。安里がカウンターに座るなりさり気なくBGMを抑えてくれるあたり、何か話しに来たと分かったのだろうか。相変わらずの千里眼に感服しつつ、心地良いジャズの調べに頬杖を突いた。
「何にする? いつもの?」
安里の好きなジンを掲げるのを見遣り、何か違うと首を傾げる。優しい味は気分じゃなくて。
「……ブランデー、もらえるかな」
「珍しい。……何かあった?」
普段あまり強い酒を好まない相手の発言に、コウはカウンターから身を乗り出す。ここは揶揄いどころではないと嗅ぎ分けているのだろう、そんな気遣いに心の中で手を合わせつつ、けれど限界まで堪えた精神は虚勢を張れるほど余力を残していなかった。
ゆえに正直に胸懐を晒す。嘘も誤魔化しも利かない相手だからこそ。
「ごめんねコウちゃん。俺、よく分かんなくなっちゃった」
だから酔いたい、と続けると小さな溜息が聞こえ。
「……はい」
差し出されたのはバーボンのソーダ割。爽やかなレモンの香りが痛む心をやんわりと癒した。それを一口含み、飲み慣れない味に目を細める。強烈なアルコールが空腹に浸みた。
「あー……、お酒って感じだねぇ」
「まったく、元バーテンとは思えない発言してくれちゃって。アサトらしくないわよ」
ホントだよね、と力なく相槌を打ちながら、けれど失敗した苦笑はそのまま無残に頬に張り付く。自嘲さえ上手く出来ないほど疲れ切った相手に、コウはただ気を揉むしかなかった。
「アサト…?」
促す声に動きを止め、安里はそっと目を閉じる。
まるで罪を悔いるように。すべてに降伏するように。
「……俺、もう、ダメかも知れない…………」
----------
安里にとって ships は元気をもらう場所であると同時に、傷をさらけ出せる
唯一の場所なのかも知れません。明日はコウの見せ場です。
お気に召しましたら「BL小説」バナーをクリックしていただけると嬉しいです♪↓